◎ 見えてなかったもの(5/5)
「(またとんでもねーのがでてきたな…)」
「(シャマル…?)」
家光はニッと獄寺に笑いかける。
「ういっス。穴ボコに落っこって助かったな少年」
「いつつ…な…っなんだてめーは!」
「命の恩人にその言い方はないだろ〜?オレは近所のおじさんだ。かわいい妻子持ちのな」
「はあ!?」
「まあ若いんだし、死ぬことなんて怖くねえってのも理解できなくはないさ。だが傷つく奴がいる一方で治そうとする職種の人間がいることを忘れんなよ」
先程の笑顔とは違い真っ直ぐとした瞳を向ける家光に獄寺は圧倒されていた。
そして家光から言われた言葉を黙って受け入れようとする獄寺に続けた。
「そいつからしたら冗談じゃないよな。大事にしてるもんを軽くあしらわれたりしたらさ。それに自分を守れねー奴が他人を守れんのか?」
「!」
「おっと仕事だ。じゃーな少年!!」
そう言って家光は足早にその場から立ち去ってしまう。
獄寺は黙り込み昔のことを思い出していた。
まだ幼くイタリアに住んでいた頃。
シャマルに教わったダイナマイトを使って左腕を負傷してしまったものの無事に敵を追っ払ったことを嬉しそうにシャマルに報告した時の記憶。
「見ろよ勝ったぜシャマル!名誉の負傷!ボムもってつっこんだらあいつらビビって全弾外してやんの!」
「殺しのことはもう教えねえ」
「え!?」
「おまえにゃまったく見えちゃいない。そんな奴にオレが教えることは何もねぇ」
あの頃言われても理解が出来なかったシャマルの言葉。
だが先程の家光の言葉と重ねたことによって獄寺は理解した。
ボロボロになった自分の手を見つめながら呟く。
「オレに見えてなかったのは……自分の命だ…………」
「!」
「獄寺君大丈夫!?」
「獄寺!!」
「じゅ…10代目!!と葵!?おま……!!」
獄寺はボロボロになっている葵の姿を見て眉をひそめる。
なんでそんな無茶をする?
一体どんな修行しているのか?
そんな心配な気持ちが浮かんでくると共に自分も全く同じことをさっきまでしていたことを思い出すと思わず口を噤む。
少し考えた後、獄寺は葵を見つめながら言った。
「……おめーも自分のこと大切にしろよ」
「……へ?」
「だから!無茶すんなつってんだよ!10代目も心配するだろーが!」
「えと…ご、獄寺君?」
「てめーが言えたタチか。てめーとは違ってこいつはしっかり家庭教師つけてやってるんだよ」
シャマルは葵の前に立つと獄寺を見つめる。
そして真剣な顔のまま言った。
「いいか。今度そんな無様なマネしてみろ。いらねー命はオレが摘んでやる」
「シャマル…」
「自分のケガは自分で治せよ。男は診ねーんだ。ったく…この10日間で何人ナンパできると思ってんだ」
「………じゃあ…っ」
「これでコンビが一通りそろったな」
その時、ツナは家光がいた事を思い出し、キョロキョロと辺りを見渡す。
「(つーか何で父さんがいたんだ?この辺で働いてんのか!?)」
それぞれの家庭教師が決まり本格的に修行を開始できるようになってツナたち。
これから迎え撃つヴァリアー戦に備えて、どこまで強くなれるのか。
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