◎ 見えてなかったもの(4/5)
「!あれ、葵!?」
爆発音を頼りに森を進んでいるとツナとばったり鉢合わせる。
するとツナはボロボロになった葵の姿を見るとあわあわと焦りながら大丈夫!?と声をかけた。
葵は苦笑いを浮かべながら大丈夫だよと返した。
その間も断続的に響く爆発音に二人は眉をひそめながら顔を見合せた。
「獄寺君はもうすぐだ!!」
「!いた!」
煙の中、立っている一人の少年。
それは紛れもない獄寺なのだが爆発に巻き込まれて満身創痍になっている姿に二人は言葉を失った。
慌てて駆け寄ろうとした時にばっと制止される。
「あなたは……Dr.シャマル!!」
「何してるの!?ここにいること獄寺君は知ってるですか?」
「知らねーだろーな。ほっとけほっとけ。あーゆー何も成長しねー奴は」
「成長しないって…?」
「そーいえば何で獄寺君は家庭教師をシャマルに……?」
「そりゃあダイナマイトをすすめたのはオレだからだ」
衝撃の事実に葵とツナは驚きを隠せない。
ツナがダイナマイトの師匠なの!?と言うと嫌そうな表情浮かべながらその言い方を止めろと一蹴した。
「弟子とるならチューさせてくれるプリプリ乙女と決めてんだ」
「(ナチュラルに変態でた!!!)」
「それか葵でも良いんだが……おまえの家庭教師って千李か?」
「あ、うん」
「あいつ、こんなボロボロになるまでやりやがって。いつでもチェンジしてやるからな!!」
「あ、あはは。…………それに今回は兄さんは何も悪くないよ」
「?」
「……昔より強くなったと思ったのにもっと凄い人はたくさんいて…その人たちと相対した時にオレは手も足も出なくってさ……悔しいよ……」
「…………」
落ち込む葵に何も言わずシャマルはポンポンと頭を撫でた。
その様子に一瞬ツナはやばいと思ったが、いつもの変態オーラは全くなく純粋に元気づけたいが為の行動と気づくと安堵の息をはいた。
葵もそんなシャマルの優しさに気づいたのか口元を噛み締める。
「でも…何で獄寺君を拒むんですか?ここまで来てんのに…」
「…………見えちゃいねーからだ」
「え…?見えてるって……!?」
「あいつにそれが見えねぇかぎり。ここでのたれ死のうが知ったこっちゃねぇよ」
足元もおぼつかない様子で見るからに修行を中断した方が良い状況にもかかわらず、獄寺は休まずに続けていく。
だが限界が来たのか躓き転んでしまうと地面に転がったダイナマイトが運悪く爆発してしまう。
その様子に流石のツナと葵も飛び出そうとするが何か察したシャマルが二人の肩を掴む。
爆煙が晴れていった先に見えたのは落とし穴に落ちている獄寺と男の姿。
見慣れたヘルメットにツルハシ、その男の姿を見て思わずツナは叫ぶ。
「と…父さん…!?」
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