◎ それぞれの家庭教師(5/5)
並盛山の中。
自然に囲まれ気持ちよさそうに千李は伸びをする。
くるっと千李は振り返ると葵に向かって袋を投げ渡す。
慌ててそれを受け止めると重厚感のある何かが入っていることはわかったが中身を確認する前に葵は千李に声をかけた。
「兄さん、今から一体何するの?」
「んー?それはな〜…」
「!」
突然千李から繰り出される鋭い拳。
なんとか瞬時に反応出来たため直撃こそ免れたが完全に避けきれていなかったのか頬が切れて赤い線が浮かび上がる。
葵はそれを拭いながら千李の様子を伺った。
一方の千李はというと嬉しそうにニヤッと笑みを浮かべながら葵を見つめていた。
「やるじゃん」
「…………(速い…!)」
「お前の修行は今から10日間オレと戦ってどんな手段を使っても良いから一発でも攻撃を食らわせたらクリアだ」
千李は親指で自分を指さしながら笑う。
一見簡単そうに思える条件。
だがそれを嘲笑うかのように葵が瞬きをした瞬間、視界から千李が消える。
背後から感じる一つの気配。
葵が振り返ると同時に繰り出される千李の蹴り。
今度は避けきることは出来なかったため咄嗟にガードするが、受け止めた腕がじんじんと熱を帯びるほどの威力で、腕を振りながら思わず葵は苦笑いをうかべた。
「(嘘だろ…オレが……)」
「……ほら、来いよ。葵」
「(兄さんに勝てるわけないだろ……!)」
◇
並盛中応接室。
ソファに腰をかけて、ボンゴレリングを弄りながら名簿を眺める雲雀の姿がそこにはあった。
ガラッと音を立てて開かれる扉。
雲雀はその音の主へと視線を向ける。
「おまえが雲雀恭弥だな」
「………誰……?」
「オレはツナの兄貴分でリボーンの知人だ。雲の刻印がついた指輪の話がしたい」
「ふーん。赤ん坊の…じゃあ強いんだ」
雲雀は嬉しそうに小さく笑みを浮かべると立ち上がる。
「僕は指輪の話なんてどーでもいいよ。あなたを咬み殺せれば…」
「なるほど。問題児だな。いいだろう。その方が話が早い」
そう言ってディーノは鞭を構える。
それを見た雲雀もディーノを睨みつけながらトンファーを構えた。
◇
「うそ〜〜〜!!ヒバリさんにも指輪がーーーー!?」
病院からの帰り道。
リボーンから雲雀が雲の守護者に選ばれたと聞いツナは声を上げる。
「あの人群れるのキライなのに入るわけないだろーー!!」
「だからこそ“雲のリング”がふさわしいんだ。あとはディーノにまかせとけ」
「!ディーノさんとヒバリさん!!いろいろ大丈夫なの〜!?それに葵だって千李さんとどっか行っちゃったし〜!!」
「おまえ、人の心配してるヒマなんてねーぞ」
「?」
「はっきり言ってヴァリアーの強さは超死ぬ気モードのおまえより上だ。よっぽどみっちり鍛えねーと殺されるぞ」
それを聞くとツナは焦りながらまだ自分はボンゴレリングの話を納得していないと拒否をする。
だがそんなツナを無視してリボーンは話を続けた。
レオンがこしらえてくれたという大量の死ぬ気弾を身体中に巻き付けて銃を構えた。
「そんじゃあ修行の第一段階を始めるからな」
「ちょっまてっ!!」
「いってこい」
ズガンと音を立てて死ぬ気弾がツナへと命中する。
「
ふっかーつ!!死ぬ気で鍛える!!」
死ぬ気モードになったツナは大声を上げながら走り去ってしまった。
そんな様子を見ながらリボーンはポツリと呟いた。
「死ぬ気でやれよ。もし後継者争いに破れたらお前だけじゃないお前の仲間も皆殺しにされちまうんだからな。それに───葵とも一緒にいられなくなっちまうぞ、ツナ」
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