◎ それぞれの家庭教師(4/5)
そんな二人を見送っていたディーノもそろそろ鍛えに行くかなと準備を始める。
てっきり味方になって戦ってもらえるものだと思っていたらしく驚きを隠せないツナに対してディーノは困ったように笑いながら言った。
「さすがに今回の件では同盟の問題でオレは手を出せねーからな。これは千李の奴も同様にだ。今やってやれんのは家庭教師(これ)くらいしかねーんだ」
「そんな〜〜!!頼りにしてたのに〜〜!!あ…もしかして獄寺君と山本のカテキョーですか?」
「いいや…更なる問題児らしいぜ」
更なる問題児とは!?とツナは顔を青くする。
「それに───…獄寺と山本は自分でぴったりの家庭教師を見つけるはずだ」
◇
場所は変わって竹寿司。
山本の父親である剛は活きの良いタイを見ながら嬉しそうに独り言を漏らす。
「いいタイだぜ〜ほれぼれするな〜。武もいねーし……♪」
そう言って剛はタイを空中へと放り投げる。
その瞬間、先程の笑顔がこぼれていた表情がかわり、するどい目つきでタイを捉える。
目にも止まらぬ包丁さばきで、タイが着地する時には綺麗に捌き終わっていて立派な舟盛りが完成していた。
「オレの腕もまだまだすてたもんじゃねーな!」
満足気にタイの舟盛りを見ていると竹寿司の扉が開けられて帰ってきた山本の姿。
「オヤジーーいるか〜〜?」
「!?どーした武〜〜?忘れもんか〜〜?父ちゃんはネギ切るのに苦戦中だ〜〜〜」
わざとらしく誤魔化す剛に違和感を感じたもののまあ良いかと山本は話を切り出す。
「?なーーオヤジ」
「どしたい?」
「剣道おしえてくんね?」
「!!」
◇
並中保健室前。
昼間で学内にも関わらずビールを片手に顔を赤く染めたシャマルが廊下へと姿を表す。
「おっと。なーんだ、隼人じゃねーか」
普段の獄寺ならちゃらんぽらんなシャマルの姿を見て声を上げるが今日は神妙な面持ちのまま言葉を放つ。
「頼みがある」
「なんだって?恋愛相談か〜〜?アドバイスとしてはまず………触れ!」
「!!」
突飛のない返事にも関わらず何故か獄寺の頭に浮かんできたのは葵の姿。
獄寺は首をぶんぶんと横に振りちげーよ!とシャマルに向かって叫ぶ。
「?」
「オレを弟子にしてみねーか?」
「…………」
その瞬間、シャマルの表情が曇る。
「やーなこった!クソガキのおもりなんかしてられっか!」
「何でもするし金はいらねぇよ!毎日ちょっとだけケイコつけてくれりゃあいいんだ」
「………おめーにゃ懲りてんだよ」
「……!」
シャマルはくるりと踵を返すと歩いていってしまう。
そして去り際に顔だけ振り返って一言。
「そーゆー話なら帰れ!!」
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