◎ それぞれの家庭教師(3/5)
「ちょっ、葵まで!んなあ!?」
ツナの制止も虚しく葵は千李に連れられてどこかへ行ってしまった。
残されたツナは頭を抱えながら絶望に打ちひしがれているとリボーンがなにやら準備を始める。
「10日間で残り4人の守護者も鍛えねーとヴァリアーには勝てねーぞ」
「ま…待てって!!つーか誰なんだよあと4人って……」
「どいつもお前のよく知る人物だぞ。ちなみにもうすぐ“晴れのリング”を持つ奴が来るぞ」
リボーンは象の被り物にボクシングのグローブを両手にはめるとパンと拳同士をぶつける。
そのコスプレを見てツナにはある人物が脳裏をよぎった時、ちょうどその人は現れた。
「パオパオ老師!!」
「ま…まさか…」
「オレを鍛え直してくれるというのはまことは!!?」
晴れのリングを左中指にはめた笹川了平を見るや否やツナはムンクの叫びのような顔になり動揺を隠すことが出来ない。
「待ってくださいお兄さん!!状況わかってるんですか!?」
「敵を迎え撃つのだろ!?相当緊迫してるらしいな!!昨日のできごと、10日後のこと、指輪の話も聞いたぞ……」
「え…」
いつもに増して真剣な表情を浮かべる了平を見て、ちゃんと理解してるとツナが思ったその瞬間だった。
「全部忘れたがな!!」
「たちまち意味ねーーー!!」
通常運転な了平にツナは頭を抱えた。
そしてリボーンに向かって叫ぶ。
「なんでよりによって京子ちゃんのお兄さんなの〜〜〜!?京子ちゃん心配するよ!」
「こいつにはファミリーにかかせない重要な役割があるからな」
「え?」
「極限まかせろ!!」
両腕を掲げて上を見上げるその姿は何故か屋内にもかかわらず太陽に照らされているかのごとくキラキラと輝いていた。
そんな姿を見て晴れの守護者にふさわしい…とツナは納得してしまう。
「ところでパオパオ老師。今日はオレのために幼なじみを呼んでいただいたとか」
「え……?幼なじみ?」
「くされ縁だぞ」
するとリボーンの首からかけてあったおしゃぶりが淡く黄色く光り始める。
おしゃぶりが光ったということはリボーンを初めとするマフィア界最強の7人の赤ん坊の誰が近くにいることを意味する。
バサバサと翼を羽ばたかせるような音ともに男の子の声が聞こえてくる。
「久し振りだな。コラ!!」
「こ……この声…!!コロネロ!!!」
ミニタリー柄のバンダナが特徴的で金髪青眼の赤ん坊、コロネロが鷹と共に空から現れる。
ツナは一度コロネロと会っており、その時にスパルタ指導を受けていたのだが…。
「元気そうだな。コラ」
今回もツナの姿を確認するや否や鋭い蹴りをお見舞していきスパルタっぷりを発揮させていた。
「なっ…なんでコロネロがここに?」
「リボーンの奴が泣きついてきたからな」
「泣いてねーぞ。今回は時間がねーからオレ一人じゃ全員鍛えられねーんだ。だからリングを持つ奴それぞれに専属の家庭教師をつけることにしたんだ」
「なあ!?か…家庭教師〜!?」
「話にあったボクサー小僧はどいつだ。コラ!」
「オレだ!!」
コロネロは持っていたライフルで了平の身体を叩いたりつついたりする。
そしてリボーンへ尋ねた。
「!こいつ本当にそんなよわいか?コラ!」
「ああ。選ばれたファミリー7人の中じゃ今、最弱の部類だな」
「……………プクク」
「(!?…………コロネロ笑うのはじめて見た……!)」
コロネロは嬉しそうに口元を上げながら了平を見つめる。
「こいつはおもしろい奴を見つけたな。コラ!もし10日間、オレのトレーニングについてこれれば他の6人なんてぶち抜くぜ。コラ!」
「?」
「そのかわり厳しいぜ。やるか?コラ」
「望むところだ!!オレは負けん!!」
「よしついてこい。コラ!!!」
「おう!!!」
コロネロから渡されたお揃いのミニタリー柄のバンダナを了平は受け取り頭にまくとコロネロの後を追って病院から足早に出ていった。
そんな様子を見ながらツナは言葉を漏らす。
「だっ…大丈夫なのか?あの二人…」
「心配すんな。コロネロは何千という生徒を見てきたんだ。そのコロネロを唸らせたってことは上手くいけば了平は何倍も強くなるぞ」
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