◎ それぞれの家庭教師(2/5)
堪らずツナは話を遮る。
そして俯いて考え込む葵を庇うように立つと続けた。
「適正だかなんだかわからないけど夜空のリングはないんでしょ!?なら気にしなくて良いよ!」
「ツナ…」
「あとオレもこんなのいらないから!!」
「あの…わりーんだけどさ…オレも野球やるから指輪はつけねーな。話もよくわかんねーし…」
「!(あの野球バカが…!)」
「(味方が出来たー!!)それに…そんなの持ってたら大変なんだって!!昨日のロン毛がまた狙ってくるんだよ!?」
最後のひと押しで話したこの言葉に獄寺と山本はピクリと反応する。
「やばいでしょ!?しかも下手したらたった10日でだよ!!」
「あいつ…来んのか…10日……」
先程の様子とは一変、眉をしかめ神妙な面持ちをうかべる獄寺と山本。
そんな二人にどうしたの?とツナが尋ねると先程まで指輪は返すと言っていた山本は指輪を見つめながら何かを考えるような素振りを見せたかと思うと口を開く。
「これオレんだよな。やっぱもらってくわ」
「え!!?」
「負けたまんまじゃいられねー質みてーだわ、オレ」
そう言って山本は走ってその場を立ち去ってしまう。
するとそんな山本を追うように獄寺も走り出す。
「オレも10日でこのリングに恥じないように生まれ変わってみせます!!次は奴をぶっとばします!」
「ちょっ、獄寺君まで……!!な……?二人とも……」
「やるなーツナ。獄寺と山本は鍛える気マンマンになったみたいだぜ」
「え゛ーーー!!そんな〜〜〜!シャレになんないって!!」
ニカッと笑うディーノとは裏腹に取り返しのつかないことになってきたと顔を青く染めながら頭を抱える。
そんな獄寺と山本を見て葵は自分がどうすべきなのかぐるぐると考えているとポンと頭に感じる温もり。
上を見上げるとニッと昔から変わらない笑顔を浮かべる兄の千李の姿があった。
「お前がどんだけ難しいこと考えてるかわかんねーけど…今はお前がどーしたいかがオレは知りたいかな」
「!(オレがどうしたいか…)」
骸との戦いを経て、ツナ達…仲間の笑顔を護りたいと思った葵。
そこから導き出される答えはただ1つ。
「みんなが戦うなら…オレも一緒にその場にいたい。強くなりたい」
「へ!?」
「…………」
真っ直ぐとした瞳を浮かべる葵を見て、周りには気づかれないくらい一瞬千李は唇を噛み締める。
ノットゥルノファミリーの女ボスが抱える運命。
その正体こそわからないが幼い時からその運命に翻弄され本人も周りの人間も傷つき、多くの血や涙が流れてきた。
そんな運命から逃れることが出来ないことを悟った千李は心の中で背負わせてごめんと呟く。
「(だからこそ少しでも力になるように…)良い返事だ!んじゃ、お前はオレと行くぞー」
「!兄さんと!?」
「ツナ!ちょっくら葵借りてくな〜」
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