◎ 再会とリングと(4/6)
あれから家光は起きなかったため、葵は翌日に挨拶しようと眠りについた。
時刻は午前四時。
ドタドタと騒がしい階段を登ってくる足音に葵は薄らと目を開く。
すると隣のツナの部屋から元気な声が聞こえてきた。
「ツナーーーー!!!」
「なあ!?」
「朝メシ獲りに行かねーか!!?」
「(朝ごはんを…獲りにいく…?)」
ワイルドな家光の発言にさすが世界中石油を掘ってる泥男なだけあるなと小さく笑みをこぼす。
そして葵はまた眠りについた。
◇
「たかいたかーい!」
あれから時刻はすぎてすっかり辺りも明るくなってきた時、外で遊んでいる家光とランボの声にツナは目を覚ます。
今度はランボと遊んでるのかと窓に目をやると何故か宙に浮かぶランボの姿があった。
どういう状況か驚いているとどしーんと派手な音が響き渡ったかと思うと次の瞬間ランボの泣き声が聞こえてくる。
「うわあああああ〜〜!!」
「ごめんな〜〜〜よそ見してた」
「………うそ…」
「そーだ。痛み止めの魔法の水をやろう!」
「!!」
家光の言葉を聞いたツナはベッドから飛び出し1階へと駆け下りていく。
そして庭に繋がる戸を開けるとそこに居た家光目掛けて叫んだ。
「ランボに酒飲ますなって!!」
「うおっス、ツナ〜〜!!おまえ父さん帰ってからずっと寝てんだもん。父さん避けられていると思ってブロークンハートだったぞぅ…」
「昨日、一日中寝てたのは自分だろ!!?」
寝ていなくても恥ずかしくて避けたくなるよ…!と心の声は抑えつつ家光を睨む。
だがそれを気に止めることも無く家光は久々に息子と話せたのが嬉しかったのかにっこりと笑顔を浮かべた。
「おはようございます」
「!(この声は───)」
学校へ行く支度を済ませた葵が1階へと降りてくる。
すると家光とバッチリ目が合う。
それを見てツナは最悪だ…と顔を青く染めていた。
だがそんなツナとは裏腹に葵の姿を見るや否や嬉しそうに家光は葵の元へと近づいていく。
「おお!君が葵君か!話は聞いてるぞ〜〜」
「山下葵と言います。いつも奈々さんやツナにはお世話になってます」
「こりゃご丁寧に。出来た子だな〜〜!」
「(もうヤダ……逃げ出したい……)」
落ち込むツナとは裏腹に葵はどこかツナに雰囲気が似ている家光に初対面ながらも親近感を覚えていて緊張して強ばっていた表情が自然と緩んだ。
家光はどかっと縁側に座ると二人に話しかけた。
「どーなんだどーなんだ?学校は?」
「え!?」
「さんすうだっけ?あれ笑っちゃうだろ!?」
「(ムリヤリ会話しようとしてるーー!!しかもズレてる!!)べ……別に笑えないよ」
「そっかそっか」
どことなくギクシャクしている二人の会話が微笑ましくて葵は小さく笑みをこぼす。
ツナはそんな葵を見て最初は家光を見てひかれると落ち込んでいたがそんな様子ではないことに気づくと家光に呆れる気持ちは変わらないものの、葵につられて小さく笑みが零れた。
家光もそんな二人の様子を優しい目で見ていた。
「父さん今回の滞在中にさ、ツナに父さんのいろんな経験談を聞かせようといろいろメモってきたんだぞ」
「えーーーっ!!?」
「すごいメモの量ですね!」
「て、葵!別に聞かなくていいからね!?(そんな浮草みたいな人生参考になんないから!)」
「あ、そうなのか?」
すると家光はツナの首元を見て頬赤く染めるとツナの背中をバシバシと叩く。
「おぉ?なんだツナ。色気づいてんなーそれペンダントだろ?」
「は…?」
家光の言葉に自然とツナの首元に視線が集まる。
そこにはチェーンに通されたハーフボンゴレリングがネックレスのようにツナの首にかけられていた。
全く身に覚えのないツナはそのリングを見つめながら顔を青く染めた。
「んなあ!?こ…このリングって…!!ボンゴレリングとかいうあの恐ろしい〜〜!!?」
「!」
「なんだツナ?青い顔して何でも相談にのるぞ」
「それどこじゃないよ!!リボーン!!!」
そう言ってツナは自分の部屋目指して階段を駆け上がっていく。
まるで嵐が去ったように静かになった庭には葵と家光が残された。
すると家光が葵に声をかける。
「こっちの生活は慣れたか?」
「!……はい!沢田家のみなさん優しくて…とても楽しく過ごさせていただいてます」
「そーかそーか!いろいろとせがれのこと助けてくれてるみたいでありがとよ。これからもツナのこと頼むな」
「こちらこそ。そういえばさっきのメモって───」
「お?気になるか?じゃ、話してやんよ〜まずはな───」
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