◎ 新しい力とオール・フォー・ワン(1/5)
演習が終わった放課後。
俺と緑谷、そして爆豪の三人はオールマイトに仮眠室へ呼び出された。
爆豪と緑谷が並んで座り、俺はオールマイトの横に腰を下ろした。
「先代の“個性”。ワン・フォー・オールそのものの成長…か」
「いっつもここで話してたんか」
「うん。かっちゃんも来ててびっくりした」
「爆豪少年も秘密を共有する者としてね」
爆豪はオールマイトに入れてもらったお茶を飲む。
オールマイトはお茶を入れ終わると何も言わずそっと醤油せんべいを机の上に出す。
「(唐突な醤油せんべい)」
「(なぜに?)」
「…オールマイトは知ってたんか。今回の事。黒い“個性”ん事」
「(あ、爆豪は突っ込まない方向ね。了解了解…)」
多分俺が好きだって言ってたから出してくれたんだろうな。
じゃあ遠慮なく……。
「(……美味っ)」
「私も初めて目にした。スキンヘッドの継承者────…お師匠様の前の継承者は黒髪の青年と聞いている。歴代継承者の“個性”が備わっていた事。恐らくお師匠様も知らなかったハズ」
「じゃあ現状てめーが初って事だなゴミ。オイ。何かキッカケらしーキッカケあったんか」
「(すごい…話をまとめつつ進行してくれる。すごい。でも…)ゴミはダメよ」
口は悪いけど爆豪はやっぱりいろんなとこで秀でてるんだよな。口は悪いけど。
そう思いながらせんべいをかじっていると緑谷が答えた。
「僕自身には特に……ただ時は満ちたとか言ってただけ…外的な因果関係があるのかも…」
「……多分俺の“譲受”が影響してる」
「そういえばハル。僕に何か話したいことがあったんじゃ────」
「うん。“黒い鞭”暴走した時、ワン・フォー・オール内に存在しているスキンヘッドの人……5代目ラリアットと接触した」
「「「!」」」
爆豪は俺がボーッと突っ立っていた時を思い出したのかあの時かと呟く。
「それで?どんな話をしたんだ!?」
「緑谷と自分を繋いでくれって。それで確信した。ワン・フォー・オールの成長、緑谷と歴代継承者との接触は────俺が影響してる」
「だが…………」
「…つまりオール・フォー・ワンが関係してんじゃねえのか?」
口を噤むオールマイトの代わりに爆豪が告げた。
「ワン・フォー・オールも譲受も元々あいつから派生して出来上がっただろ?複数“個性”の所持────…なるほど。あいつとおんなじじゃねえか」
「………言いたくなかったことを……またああならぬようもっとその力を知る必要がある」
「そうだな…」
「おいデク」
「かっちゃんどうしたの?」
「ツラ貸せや」
「えっ」
「実践で試すのがはえーだろ。来いや」
爆豪はそう言うと立ち上がって仮眠室から出ていこうとする。
緑谷もそんな爆豪を追った。
オールマイトも行こうと声をかけ立ち上がろうとするがそれを俺が制止した。
「オールマイト」
「どうした?そんな神妙な顔して」
「歴代の継承者について調べてもらっても良い?」
「もちろん。私も調べようと思っていたからね。…何か気になることでもあるのかい?」
「緑谷の…複数“個性”の発現に関して。……あくまで俺の推測になるんだけど────」
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