◎ メッセージ(3/6)
速すぎる男ホークスの“剛翼”によって敵達は無力化されていく。
一方のエンデヴァーも老人を確保し無事に事件は終息に。
「エンデヴァーさんがピンチかと思って」
「この俺がピンチに見えたか」
「見えたよねえ。焦凍くん」
「え…あ…はあ…」
「来る時は連絡を寄越せ」
「いや。マジでフラっと寄っただけなんで」
数分経ってからやってきた警察に敵を引渡しが完了し、こうしてNo.1、No.2ヒーローの活躍により事件は幕を閉じた。
俺たちは初めて会うホークスと自己紹介をした。
「緑谷といいます!」
「指破壊する子」
「俺は水科です」
「すんごい水ぶっぱなしてた子。あと……ああ!ヘルパットさんのとこに職場体験行ってた変な子だ。変わり者というか怖いもの知らずというか────面白いね」
「あ…あはは……」
「ツクヨミくんから聞いてるよ。いやー俺も一緒に仕事したかったんだけどね────」
「常闇くんは…?ホークス事務所続行では…」
「地元でサイドキックと仕事してもらってる。俺が立て込んじゃってて…悪いなァって……思ってるよ」
ヘルパットもだけど忙しいんだな…時期的なもんか?
いやでも年明けだからって事件数増えてる訳でもないし……。
「(うーん……)」
「さっきのぁ俺の方が速かった」
「それはどーかな!あ、でも────」
ホークスはそう言いながら俺の肩に腕を回す。
いきなりのことに驚いている俺を見て掴みどころのない笑顔を浮かべた。
「水科くん速かったね。水の障壁…体育祭の時とは違ってまだまだ動けそうだね。特訓した?」
「あ…ありがとうございます」
「いやーこれならエンデヴァーさんも安心して炎ブッパできますね」
「何を言う。で!?何用だホークス!」
警察の事情聴取を終えたエンデヴァーがホークスに尋ねる。
するとホークスは俺の方を見てニッと笑うと肩から腕を外し、服のポケットからある本を取り出す。
「用ってほどじゃないんですけど…エンデヴァーさん。この本読みました?」
「異能解放戦線…」
「?」
「いやね!知ってます?最述エラい勢いで伸びてるんスよ。泥花市の市民抗戦で更に注目されてて!昔の手記ですが今を予見してるんです。“限られた者にのみ自由を与えればその皺寄せは与えられなかった者に行く”とかね。時間なければ俺マーカーひいといたんでそこだけでも!」
ホークスよっぽどこの本に感銘受けたんだなあ…圧がすごい。
エンデヴァーも突然のことでポカンと訳が分からないといった様子。
だがホークスは続けた。
「デストロが目指したのは究極あれですよ自己責任で完結する社会!時代に合ってる!」
「何を言ってる…」
「そうなればエンデヴァーさん。俺たちもヒマになるでしょ!」
ホークスってエンデヴァーと話す時はこんな感じなのか。
テレビで見た時や常闇の話を聞く感じだといつも笑ってのらりくらりと躱してるイメージだったけど……それこそヘルパットみたいな。
ヘルパットは普段はのらりくらりしてるのに真剣な時はスイッチ入るんだよな。
「読んどいて下さいね」
そういいながらホークスはエンデヴァーに本を手渡す。
言葉では言い表せない違和感を感じつつも、今日会ったばかりのホークスの素性を知らない自分には何も言えないと思って俺は口を閉ざしたままでいた。
「No.2が推す本…!僕も読んでみよう。あの速さの秘訣が隠されてるかも…」
「そんな君たちの為に持ってきました!」
「用意がすごい!!」
どこに隠し持っていたのかわからない本4冊を取り出すとまたもや目にも止まらぬ速さで俺たちに渡していく。
「そうそう。時代はNo.2ですよ!速さっつーなら時代の先を読む力がつくと思うぜ!」
「この本が大好きなんですね…こんなに持ってるなんて」
「轟。多分布教用だと思うぞ」
「そゆこと水科くん。そういえばヘルパットさんもハマってたよ」
「!(ちょっと意外……こういうの読まなさそうなイメージ)」
ホークスは背中の“剛翼”をバサッと広げる。
その翼は何処にでも飛んでいけそうなくらい大きくて圧倒的な存在感を放っていた。
「全国の知り合いやヒーローたちに勧めてんスよ。これからは少なくとも解放思想が下地になってくると思うんで。マーカー部分だけでも目通した方が良いですよ」
「(ホントだ。マーカーしてある。マメだなァ…)」
「“2番目”のオススメなんですから」
なんだか気になる言い回し…。
漫画とかゲームだとこういうの攻略のヒントになったりするんだけど現実世界だとなかなか無いよな。
とりあえず俺も帰ったら読んでみようかな。
「5人ともインターン頑張ってくださいね」
そう言い残すとホークスは大空へと羽ばたいていった。
「若いのに見えてるものが全然違うんだなあ…」
「ホークスってまだ22歳だよな」
「6歳しか変わんねえのか」
「ムカつくな……」
「ああ。…そうだな」
prev|
next