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 冬休み(6/8)



「二人ともありがとう!もうすぐご飯できるからね!」



おばさんはそういうと俺たちを居間へと案内した。
テーブルにはサラダや味噌汁が並べられていて、後はメインのみといったところ。
すると隣の台所からカチャカチャと料理する音やダシの良い香りが漂ってきて懐かしい気持ちが蘇る。



「お待たせ。今日は出久の好きなカツ丼にしてみました」

「美味しそう…!!!」



炊きたてご飯にかけられたプルプル卵の上にはダシをたっぷり染み込んだ衣に包まれた豚カツ。
見るだけで食欲を触発してくるそのビジュアルに思わず生唾を飲み込んだ。



「「「いただきます」」」



早速出来たてホヤホヤのカツ丼を一口。
美味しいのはもちろん、優しくて温かい香りや味付けに癒されていく。
これが家庭の味ってやつだ…。

味噌汁やサラダももちろん。
あまりの美味しさに思わず食べることに必死になってしまっていた。
それは緑谷も同じでそんな俺たちをおばさんは優しい笑顔で見守ってくれていた。



「「ご馳走様でした!」」



一緒のタイミングで食べ終わって思わず顔を見合わせて笑いあった。
おばさんも食べ終わったのを確認してから、一言断ってから食器を台所へ運んだ。



「ゆっくりしてていいのよ!」

「いえいえ。あんなに美味しいご飯頂いたのでせめて皿洗いくらいはさせて下さい。こう見えても皿洗い得意なんです」



そう言ってニッと笑った。
残った食器を運んできた緑谷もおばさんに向かっていった。



「僕も手伝うから母さんはゆっくりしててよ」

「あら…じゃあお言葉に甘えて────」



寮では基本ランチディッシュの料理が多いが、朝などは自分で用意しなければならない。
そういった背景もあって、この寮生活を経て俺たちは最低限の家事も出来るようになっていた。



「終わりました〜」

「あら!早いわね」

「二人だったからね」

「だな」

「あ、お風呂洗って入れておいたからお母さん先に入ってきたら?」

「…………」



するとおばさんの目から大量の涙があふれる。
あまりにも突然の事に俺は少し焦ってしまったがどうやらいつもの事なのか緑谷は平然とした態度でおばさんのことを慰めていた。



「出久立派になったねえ…!ハルくんもこっちがもてなすつもりがこんなに気を回してくれて…!!」

「わああ待って!下の小池さん家が雨漏りしちゃう!」

「(こういうの…すごく良いなあ……)」




「ハル」




段々と薄れてきている母さんの声、仕草、温もり、俺に向けてくれた表情。
だけど…今日いろんなところで“懐かしい”って感じられた。
きっと俺が昔経験したことがあること。

……うん。大丈夫だ。
少しずつ忘れてしまっても…まだ残ってる。




「ハル、おかえり」





いつだって俺にも帰る場所がある。





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