アトラクトライト | ナノ

 冬休み(3/8)



「疲れた……」


すっかり日もくれて晩ご飯の時間。
俺は1階の共同スペースにあるソファに項垂れていた。
同じように飯田、常闇、砂糖、口田の四人も疲れた顔をしてソファにもたれかかっていた。



「お。ハル、部屋キレイになった?」

「姑かっちゃんのおかげで入居時くらいピカピカになったわ……」

「あれでよく掃除終わったっつえたな。ハウスダストで死ぬわ」



ベッド・ソファの下は勿論。
窓のサッシや電源コードに溜まったホコリなど爆豪細かくチェックされ怒られながらもなんとか掃除を終えられた。
めちゃくちゃ疲れたけど…ピカピカになった部屋は心做しか空気が澄んでる気がして気持ちよかった。

爆豪も自分の部屋掃除してからで疲れただろうに…なんだかんだ最後まで一緒にいてくれて優しいやつだなと再実感した。



「そういえば明後日から帰れるね!」



芦戸の発言を皮切りにみんなの話題は明後日に控えた帰省に。

全寮化の経緯から帰省は難しいと思われたがプロヒーローの護衛付きで生徒は2日間家族の待つ自宅に帰ることが許された。
久々の帰省、家族との時間にみんな待ち遠しさを隠しきれずにいた。



「ハル、テメーは帰んのか」

「俺は────」




「父さんは帰国するの?」

《帰りたかったんだが……年末年始の特番に呼ばれてしまって……少し難しそうなんだ。ごめんよ》

「特番出るの!?なんて番組!?」

《!》

「……あ、えっと…帰って来ないのは残念だけど…それ以上に父さんの活躍の場が広がるのが嬉しくて────だから次に帰ってくる時は言ってね」

《……ありがとう。ハル》




父さんは仕事の関係で帰国が難しく年越しは海外で迎えるとのこと。
父さんが戻ってくるなら帰省しようかとも思ったけどそうじゃなくなったなら帰る理由もなく、一人寮で過ごそうかと考えていた。



「ってことで俺は残る予定」

「……そうかよ」



なにかちょっかいかけてくるかと思ったけど爆豪は少しだけ伏し目がちにそう一言。
意外な反応に俺もどうしたら良いのかわからなくて沈黙が訪れる。

家族の話題はセンシティブで、ましてや俺の家庭環境は少し変わっている。
爆豪は乱暴な言葉を使うけど思ったよりも繊細で人のことを気遣える性格だ。
俺のことも、あと…轟のことだってそうだ。



「手際いいなと思っただけだ」

「なんか爆豪…お母さんみたい」

「!!!っざけんな!!誰がテメーの────……」



あいつなりの不器用な気遣いを感じる。



「爆豪。俺は大丈夫だよ」

「!」

「寂しくないって言ったら嘘になるけど…父さんとはまた帰国した時に会おうって約束したんだ。だから会える日が皆より少し先なだけ」



そんな優しい彼が悩まなくて良いように俺は笑った。



「ゆっくりして来いな。なんか面白い話し合ったら聞かせてくれよ」

「……フンっ」



プイッと顔を背ける。
相変わらずの態度だけどそれがいつもの爆豪だなーと感じて俺は安堵した。

そんなやり取りをしていると緑谷がやってきた。



「緑谷、掃除終わった?」

「うん。ハル、帰省のことだけど…」

「?」

「ハルがもし良かったらさ───」





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