◎ 受け応えろ!インタビュー(3/4)
どんどんみんなのインタビュー演習が過ぎていき俺の順番が近づいてくる。
「(……こういうの苦手なんだよな…なんて答えよう……)」
想定される質問に対する回答をぐるぐると考える。
俺と言えば…“温冷水”…水……。
「明鏡止水。水のように清く正しく!」いやいや…そんなキャラじゃないし……。
それに“圧力”とか掛け合わせた“ドライアイス”。
それらのおおもとになる“譲受”だってある。
言葉を考えれば考えるほどまとまらなくなる。
「じゃあ……次は水科くんね」
「!」
やばい。全然まとまってないのに順番が来た。
とりあえず呼ばれたから台に上がるしかない訳だけど……登ってみると思った以上に高くて、カメラやみんなの視線が突き刺さる。
この雰囲気……苦手だなあ……。
「さてと。ハルくんでしたっけ?活躍見ました!」
「ありがとうございます」
「ハルくんは仮免取得してからまだ日が浅いとのことですが…これからどんなヒーローになりたいでしょうか?」
「(きた……!)えっと……」
どんなヒーローになりたいか。
どんな社会を実現したいか。
誰も泣かなくて済むように。
ナチュラルボーンヒーローたちが報われるように。
みんなが幸せに暮らして行けるように。
「…………」
「……?」
「あれ?ハルのやつどうした?」
「(……でもそれを叶えるには俺の力はちっぽけだ…)」
その時、ふと頭をよぎる。
「ハル。相手を思うことから正義は始まるのよ」
「困っている人がいれば手を差し伸べる。例えば……お腹を空いた人にパンを差し出す、道に迷った人を案内してあげるとか───。相手を思いやることから“正義”は始まる。昔の空想上のヒーローなんてそんな存在だったんだ」
二人からの言葉。
「……俺は─────」
考えてもまとまらないなら思ったことをそのまま話してみよう。
「どんな時でも笑いながら“大丈夫”って声をかけられる…そんな俺に安心して笑ってくれるような…みんなの笑顔を護れるようなヒーローになりたいです」
いつも笑っていて欲しい、とあの二人に思った気持ちは変わらない。
包み隠さずに話す言葉は照れくさくて、だから俺はいつものように馬鹿みたいに笑った。
するとそれを見たMtレディは両手を口にあててまっすぐ俺を見ていた。
「あらあ…(素敵……イケメン…………)」
「え?」
「けっ。世の中所詮顔だってわかったな」
「そこ!!なんか言った!?」
Mtレディと峰田のやり取りは鉄板だな……。
そんなことを思っていると障子が口を開く。
「笑顔、か。ハルは実力もさることながら、演習などで共にいてくれると安心するのは……それも大きな要因となっていそうだな」
「わかるわかる。超不安なときもハルが“大丈夫”って笑ってくれるとそんな気がしてくるもん」
そう言いながら葉隠は俺に対してピースしてくれた。
「精神安定野郎」
「空気清浄機パイセン」
「笑顔燦々くん」
「そこの爆豪派閥ども!変なあだ名つけんなー」
爆豪派閥(上鳴、切島、瀬呂)に茶化された俺を見てみんなは笑った。
それが嬉しくて俺も笑った。
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