◎ 記念撮影(4/5)
「昼だー!」
「雪も降り続いててかなり冷えてきたね」
「今日の昼は鍋焼きうどんだって」
「寒い日にぴったりで最高だな!」
時刻は昼。
みんなが寮の1階へ集まってランチディッシュを今か今かと待ちわびていた。
そんな時、飯田くんが僕に声掛けた。
「緑谷くん。ハルくんは見てないか?」
「そういえば……いないね。まだ演習場から帰ってきてないのかな」
メッセージを送ってみるものの…相変わらず既読はつかない。
ハルらしいと言えばハルらしいんだけども。
「僕見てくるよ」
「ありがとう。緑谷くん」
すぐ戻るつもりだったから特に上着などを着ずに飛び出したものの……玄関を開けた瞬間、肌を突き刺す冷気が襲いかかる。
面倒くさがらずに部屋に取りに行けば良かったかなと後悔しながらも、そのまま演習場へ走った。
演習場からは音がしてまだ自主練中みたいだ。
ハルは熱中すると時間忘れてのめり込んじゃうんだよなあ。
「(……だけど)」
「…………もうちょっとこう……うーん……」
真剣な表情で、
真っ直ぐとした瞳で、
自分自身と向き合う姿はかっこよくて、
「…………」
自分も負けてられないと思わせてくれる。
「ハル」
「!緑谷か。いつからいたんだ?」
「さっき来たところだよ。もうすぐご飯だから呼びに来たんだ」
「!もうこんな時間か!メッセージくれてたよな?ここまで来させてごめん。すぐ片付ける」
「僕は大丈夫だからゆっくりで良いよ。そういえば────そのコスチュームとゴーグル変えた!?」
「ああ。発目に頼んでて今朝取りに行ったんだ」
ハルが普段からよく着ているパーカーを取り入れたスポーティやデザインのコスチューム。
前は白ベースだったけど…今回は黒ベースになってる!
黒は黒で引き締まった印象になってかっこいいなあ…。
ゴーグルはパッと見、大きく変わってないように見えるけどボタンが追加されてる……ってことは機能面に変化があったのかな?
「──── 一体どんな機能が……」(ブツブツ)
「おーい。全部口に出てるぞー」
そう笑いながらハルは体操服に着替えて出てくる。
「僕としたことが……!は、早く戻ろっか」
「…………」
ハルは僕をじーっと見つめる。
思わず僕は首を傾げた。
「?」
「もしかして緑谷そのカッコで来たの?」
「うん。演習場なら近いし別にいいかなって」
「…………」
僕がそう答えるとハルは黙ったまま徐に首に巻いていたマフラーを解くと僕の首にかけた。
「寒さ紛らわせられるかわからんないけどないよりはマシだろ?」
「え!?それじゃハルが……」
「俺は大丈夫。体操服上まで上げちゃえば首も守れるし!」
ハルはニッと笑いながら体操服の襟に顔をうずめた。
「さっ。帰ろ。今日の昼ご飯は?」
「今日は鍋焼きうどんだって」
「寒い日にうってつけじゃん。絶対美味しいやつだな」
「だね」
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