◎ 記念撮影(3/5)
支度を済ませて向かったのはサポート科の工房。
製作途中の様々なサポートアイテムを眺めつつある人物の姿を探す。
「(いたいた)」
サポートアイテムの制作に夢中になっている彼女の姿を見て声をかけて良いものか戸惑っていると何やら焦げ臭い匂いが鼻をくすぐる。
臭いの元を辿るとそれは彼女の方からしていて、嫌な予感がすると思った瞬間だった。
「あ」
そう声を漏らした瞬間、バチッと嫌な音が響く。
慌てて俺が彼女の身体を引っ張るとそれとほぼ同時に手元の機械がボンッと音を立てて発火した。
「あ…危な────」
「ん?あなたは────ハルくんじゃないですか!来てたんですね!」
「さっき来たところ。忙しいとこ悪いな発目」
発目は全く気にする様子もなく俺が頼んでいたものを持ってきた。
「あなたから頼まれていたベイビーたち完成してますよ。まずは……コスチュームです!ベースは大きくは変えずに素材を冬仕様にしてみました。注目すべきはこのウエストポーチの収納力!動きの邪魔にならないコンパクトさなのに圧倒的なこの収納力!取り出しやすさにもこだわりましたよ!」(ペラペラ)
発目の弾丸トークに圧倒されつつも、受け取って確認してみると細部までこだわりが詰め込まれていることがわかる一品で正直期待以上だった。
「そ・し・て!今回の目玉はこちらのゴーグルです!提供頂いたゴーグルのベースからは変えずに機能だけ追加したイメージです」
俺は発目からゴーグルを受け取る。
これは昔父さんからもらったもので大きくは変えたくなかったから要望通りに作ってくれて本当に良かった。
早速装着してみる。
「左側にボタンがあるのわかりますか?その1番上を押して見てください」
「これか」
俺がボタンを押すと発目は工房の電気を消す。
辺りは暗闇に包まれて何も見えなくなると思いきや……。
「!!すごい!暗視ゴーグルになった!」
「ヒーロー活動は日夜問わず行うもの。ゴーグルをつけていると何もつけていない状態と比べれば視界も悪くなります。しかし!どんな状況下でも最高のパフォーマンスを引き出すのがサポートアイテムの役割です!」
「でも暗視ゴーグルって高いんじゃ…………」
「ですね!ですが今回は試作品扱いなのでそこら辺は気になさらず!」
「(ほんとかなあ……)」
と言っても俺がポンと払える金額ではないだろうしここは素直に甘えておこう…。
「ありがとう。発目」
「他にもいろいろな機能がありますが…まあ使っていくうちにわかると思います!これマニュアルです。私のベイビー可愛がってあげてください!では、また何かあれば!」
そういって発目は自身の開発作業へ戻っていく。
こうなると声をかけても無駄で俺はそんな発目に笑いながらも工房を後にした。
何かに誇りを持って向き合うってかっこいいな。
「(俺にとってのそれは─────)」
右手を見つめてぎゅっと握りしめた。
そして発目から受け取ったコスチュームとゴーグルを持って演習場へと走った。
prev|
next