◎ ある雨の日の話(2/5)
普段と比べて心もとない光源に窓の外からは吹き荒れる激しい雨風の音。
徐々にみんなの不安が募っていくのが分かる。
それを悟っていたのは俺だけはなかったようで切島がこっそり耳打ちしてきた。
「なんかみんなの気ィ紛らわせることねえかな…」
「うーん…そうだな…。なんかカードゲームとかする?」
「いーじゃん!電気もいらねーし暇つぶしになりそうだな!」
「俺トランプ持ってるぜ」
「瀬呂ナイス!んじゃ一緒に取りに行こう」
暗闇の中単独行動するのもと思ってたから同階の瀬呂がいてくれて良かった。
でも切島は4階。
一緒に行っても良いんだけどどうせなら誰かもう1人連れてってもらった方が早いな。
「お前ら一緒の階か!俺も誰か…………バクゴー!トランプ持ってねー…………よなあ?」
「決めつけんな!そんくらいくらい持ってるわ!!」
「え。爆豪トランプ持ってんの?」
「意外」
「その言い草はなんだァ!俺が持ってたら悪いのか」
「悪かねーよ。ナイスだ!んじゃ俺はバクゴーと行くわ。飯田ーちょっと俺ら4人取りに行くもんあるから一瞬部屋戻るなー」
「暗いから足元気をつけるんだぞ!」
飯田から懐中電灯を2つ借りると俺と瀬呂、爆豪と切島で部屋へと向かう。
エレベーターが泊まっているため普段あまり使わない階段から上がることに。
1階にみんなが集まっていることもあり人の気配もなくただ俺たちの足音だけが響き渡り、何も見えない暗闇を照らす懐中電灯が逆になんだか不気味さを掻き立てていた。
「雰囲気あんなァ…」
「さっさと回収して戻ろうぜ」
「あ?ビビってんのかよ。情けねえ…………」
爆豪の首元に何か雫のようなものが流れ落ちる。
ヒヤッとした感覚に驚いた爆豪は飛び上がるとその場から“爆破”を使って一気に距離を離してからなんだと振り返って様子を確認する。
するとそこには“温冷水”によって水を発生させて手を濡らす俺の姿。
イタズラをした正体に気づいた爆豪は青筋を浮かべると今度は一気に俺との距離を縮めた。
「テメェ!!ざけんな!!!」
「あはははは!ごめんごめん!まさかそこまでびっくりするとは……あははは!!」
「驚いてねえ!!」
飛びかかってくる爆豪をひょいと避けると俺は腹を抱えて笑った。
「(あれサラッと避けるのすげえな……)」
「…………ぷっ。あはははは!!バクゴー猫みたいに跳ね上がってたな!!」
「てめーも笑うな!クソ髪!!!」
「(猫…確かにすげー飛び上がってたな……)くくっ…あははははは!!!」
「っっ!!」
クソが!!!
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