◎ ヒーロービルボードチャートJP(4/7)
少し遅れて寮に戻ると1階にはA組のみんながいた。
緑谷たちは自室に戻って私服に着替えてるらしく、俺もそうしようとした時に上鳴が手に持っていたシロツメクサの花かんむりに気づいて何か聞いてきたから俺はエリちゃんからもらったことを伝える。
すると瀬呂はニヤニヤ笑った。
「ふーーん」
「な、なんだよ…」
「エリちゃんにやけに好かれてるな〜って思ってな」
その言葉を聞いた上鳴は何か察したような仕草を見せる。
そして同じようにニヤニヤと笑いながら俺に近づくと肘でつついてきた。
「へえ〜〜。ハルくんも罪な男ですなあ〜」
「?」
初めはなにかよくわからなかったけど2人のニヤニヤした表情を見て察する。
「そ、そんな訳ないだろ!!これはお礼とかそんなんだって───」
「切島たち差し置いてひとりだけねえ??」
「お見舞い行く機会も多かったから!あんまイジんな!」
「悪ィ悪ィ。ほらハルも早く着替えて来いよ。来客来ちまうぞ」
「ったく……」
瀬呂に促されて俺は自室へと向かう。
でも2人にイジられたせいか顔に帯びた熱が一向に冷めない。
エリちゃんが……まさか……仮にそうだとしてもまだ小さいわけだから一時の感情に過ぎない。
そう自分に言い聞かせるともらったシロツメクサの花かんむりを壁に刺した押しピンに引っ掛けた。
そして急いで着替えを済ませて1階に降りると既にお客さんは来ていたらしくがやがやと騒がしい。
「!」
「あ!水科くん」
「プッシャーキャッツ!?」
プッシャーキャッツのマンダレイ・ピクシードール・虎、そして───
「林間合宿ぶりね!もう体調はバッチリ?」
「はい!えと…ラブドールも大丈夫ですか?」
「アチキもこの通り!」
俺と同じように拉致されたラブドールの姿もあった。
“個性”を奪われたと聞いていたから心配していたけど元気そうで安心した。
そして緑谷の近くからひょこっと顔を出す小さなひとつの影。
「洸汰!」
「!」
洸汰に近づいて、目線に合うようにしゃがみこんで久しぶりと笑いかける。
すると洸汰は何か言いたそうに口をもごもごとさせながら、久しぶりの再会で気恥ずかしかったのか頬を赤く染めてぷいっと顔を背ける。
「手紙ありがとう。あと……帽子の件はごめん。ちゃんと届いててよかった」
林間合宿の時に敵に狙われていた俺を気遣って、少しでも顔を隠せるようにと洸汰は自分の帽子を貸してくれた。
ちゃんと返すと約束したのに…敵からの襲撃にあった俺は借りていた帽子をボロボロにしてしまい、その後新しい帽子をマンダレイ経由で送った。
本当は直接渡して謝るべきだったけど、当時はそれどころか外出すら難しくて叶わなかったから手紙でそのやり取りをさせてもらっていた。
「それより怪我は大丈夫なのかよ。テレビで……ボロボロだったから……」
「!」
恐らく保須市の件をテレビで見たんだろう。
こんな小さな子にまで心配かけて…情けないな。
俺はニッと笑いながら洸汰の頭を被っていたキャップ越しに撫でた。
「この通りめっっっっちゃ元気だよ!心配かけてごめん。あと…ありがとう」
「別に…うん」
ちょっと不器用な洸汰が可愛くて俺はまた笑う。
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