◎ 新しい力とオール・フォー・ワン(5/5)
翌日。
放課後の教員寮に俺と緑谷は呼ばれた。
向かってみると通形先輩にエリちゃん、そして────
「ゆうえいの…ふのめん…」
「ぶっ!!!」
「アハハハ何言ってんのかなこの子ォ!何言ってんのこの子ォ!?そんで何君は吹いてるんだァ!?」
「ついつい…ごめん。…っ…くくっ…」
「(あ。ハルツボってる)」
雄英の負の面こと、物間がいた。
エリちゃんの突飛な発言に思わず俺は吹き出す。
どうやら先輩が絵里ちゃんに教えたらしいけど…一体普段どんな会話をしているのか少し心配になってきた。
すると呼び出し張本人の相澤先生が遅れてやってくる。
今から何を行うのかと思っていたら相澤先生がちゃんと説明してくれるようだ。
「物間に頼みたいことがあったんだが如何せんエリちゃんの精神と物間の食い合わせが悪すぎるんでな」
「僕を何だと思ってるんですかぁ!?アハハハ!」
「(なるほど)」
相澤先生に連れられて俺たちは教員寮へ入る。
そして先生は物間に対してエリちゃんに“コピー”をするよう指示を出す。
それに準じて物間はエリちゃんの個性の“コピー”を行い額に小さなツノが生えてくる。
それを見て怯えて俺の服の裾を掴むエリちゃんに俺は大丈夫だよとなるべく安心してもらえるような声色で声をかけた。
「うーん…“スカ”ですね。残念ながらご期待には応えられません。イレイザー」
「…そうか。残念だ」
「物間。“スカ”って何だ?」
「緑谷くんと同じタイプって事。緑谷くん。君も溜め込む系の“個性”なんだろ?」
「「!」」
「僕は“個性”の性質そのものをコピーする。何かしらを蓄積してエネルギーに変えるような“個性”の場合、その蓄積まではコピーできないんだよ」
「ってことは俺の“個性”も?」
「そ。手貸して」
物間に言われて手を差し出す。
その手を物間が掴んで技を発動するような素振りを見せるが何も起こらない。
「ほらね。こんな風にさ」
「なるほど」
その理屈じゃなかったとしたら…緑谷から“ワン・フォー・オール”をコピーした時に爆発四散してた可能性があるってことか…!
危ない…。
「あ…そういうことか」
「?水科くんどうしたの?」
「エリちゃんが再び“個性”を発動せられるようになった時、物間がコピーして使い方が教えられたら良いって思ったからですよね。相澤先生」
「ああ。エリちゃんの負担も減らせられるかと思ったが…そう上手くはいかないか」
通形先輩の“個性”復活にはエリちゃんの“個性”が必須。
だけどエリちゃんに負担をかける訳にはいかないと気遣っての提案だったけど相澤先生の言う通りなかなか上手くいかないな…。
するとエリちゃんは俯き、自分の額から出ているツノを撫でながら呟く。
「…ごめんなさい。私のせいで困らせちゃって」
「!」
「私の力…皆を困らせちゃう。……こんな力無ければよかったなぁ…」
まだ幼いこの子が自分を責めて俯いている。
せっかく笑顔を取り戻しくれたのに、そんな顔して欲しくない。
もうさせたくない。
俺はエリちゃんの目の前に移動すると同じ目線になるようにしゃがみこむ。
「困らせてばかりじゃないさ。エリちゃんは緑谷と俺のことも救けてくれた。忘れないで」
「君の力は呪いなんかじゃない。可能性に満ち溢れた希望だ」
君が下を向かずに済むなら何度でも伝えるよ。
「そうだな…あ!使い方だと思う。ほら。包丁だって危ないけどよく切れる程美味しい物が作れるんだ。だから───エリちゃん。君の力は素晴らしい力だ!」
時に力は牙を剥く。
だけどその力の使い方を誤らなければ心強い味方になる。
目の前のエリちゃんに言ってる言葉だけど……緑谷にも伝わっていたらいいなあ。
「あいつとおんなじじゃねえか」
きっとこの力は緑谷の味方になってくれるよ。
「…私、やっぱりがんばる」
「初代の記憶に残る…あいつの気配そっくりだ」
俺のこと力もきっと────
「…うん。一緒に頑張ろう」
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