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 新しい力とオール・フォー・ワン(2/5)



場所は変わって校内演習場。
先に行った緑谷と爆豪を追いかけるべく更衣室で体操服に着替えていた。



「…………」



“ワン・フォー・オール”の進化。
“譲受”の進化。




「俺にはおまえから……もっと強大なもんを感じる。初代の記憶に残る…あいつの気配そっくりだ」




ラリアットが言ってた言葉がひっかかるな…。
“あいつ”……。




「会いたかったよハル」




オール・フォー・ワンの姿が頭を過ぎって思わず俺は首を横に振った。

全てはオール・フォー・ワンからワン・フォー・オールは始まった。
とすると歴代の継承者の宿敵とも考えられ、ラリアットが“あいつ”呼びするのも違和感はない。

だけど俺の中に気配を感じるってなんなんだ?
オール・フォー・ワンとの接触は神野の事件以来はないし、夢に出てきた訳でもない。
ただ単純に俺の“個性”がオール・フォー・ワンから派生して生まれた“譲受”だから?



「…………(わかんねえ…)」



とにかく緑谷に…みんなに何か危害を加えるようなことがなければ良いんだけども…。




「この先どんな運命(こと)が待っていようと自分を、信じた周りの奴らを見失うな。必ず生き延びろ」

「安心しろ。俺らもついてる」




「(信じる、か……)」



体操服のチャックを上まで閉めて顔を埋めた。

少し急ぎ足で演習場に向かうと近づくほどに騒々しくなってくる。
なんとなく嫌な予感がしながら扉を開けると爆豪が大声で叫びながら緑谷に対して容赦のない攻撃を仕掛けていた。



「オ゛ラ゛どうした!ビビってんのかゴラ!」

「待ってって!!待ってマジで出ないんだって!」

「(あ〜〜〜…)」

やめーー!!そういうんじゃないから!落ち着きなさブハッ」



いきなり大声を出したせいかオールマイトが吐血する。
なんてカオスな空間…と思いつつとりあえずオールマイトにティッシュを差し出した。

オールマイトの制止がきいたのか爆豪は攻撃を止めて地面に着地する。



「ヤバくなりゃ出るもんだろうが。こういうのは!」

「いや、これ出さない為の練習だから」

「なんつー力技…。で、緑谷どう?」

「…やっぱり出ない。気配が消えた…」

「危機感が足ンねンだよ!もっとボコしゃあひょっこり発現すンだよ!んでその状態のテメーを完膚なきまでにブチのめして俺が一番──「モチベーションおさえて。爆豪少年」



演習みたいに暴走しないよう“黒鞭”の発動条件を把握しておくことは必須。



「ちなみにハル少年はどうだい?」

「俺も全く」

「うーーむ…」



悩むオールマイトを横目に俺は緑谷に声をかける。



「“黒鞭”が発現した時の心境はどうだった?俺が“圧力”を発現した時は覚さんが攻撃されそうになって気持ちが昂ったのがトリガーになったんだけど」

「確かに……!そうか。反対に僕の気持ちに呼応するのならあの時僕は───今扱える力じゃない。そう判断した」

「!」

「それでロックが掛けられたような状態になってるのかも。……だとすると解錠と施錠のイメージを構築してみて……」(ブツブツ)



緑谷の早口言葉が始まると爆豪は怪訝そうな顔をするとポケットに両手をつっこみながら扉の方へ歩いていってしまう。



「つまンねえなクソが!扱えねーなら意味がねェ!帰る!てめーのブツクサ聞くと俺あサブイボ立つんだ」

「あらら。行っちゃった」

「緑谷少年。今日はここまでにして私たちも帰ろう」

「はい」

「ハル少年は?」

「せっかく着替えたしちょっとだけ自主練してくよ。緑谷。後で食べるから俺の分の晩ご飯置いといて」

「わかった。あんまり遅くならないようにね」



緑谷とオールマイトを見送ってとりあえず今から1時間…8時くらいまで自主練を行うことにした。
先程の演習で課題とわかった更なる“圧力”のコントロール。
早くものにして使いこなせるようにするんだ。

しばらく自主練を行っていると背後から聞こえてくる声。


「おー精が出るねー」

「!」

「ヨッ」



扉の前には通形先輩が笑顔で手を振って立っていた。



「センパイ!どうしてここに?」

「ハルくんに用事があってね。緑谷くんにここにいるって聞いたんだ」

「!」



近くに置いてたスマホを見てみると先輩からメッセージが入っていた。
それに気づけなかったことに謝罪を述べるとHAHAHAと笑いながら気にしてないと言ってくれた。
先輩は変わらないな……。



「俺に用事ってなんですか?」

「実はね─────」





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