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 忘れないでいたいよ(7/7)



咄嗟に目を閉じた時、遠くから声が聞こえた。




「─────っおい!」

「!!」



その声の方を見ると先ほどとは一変爆豪の姿があった。
どうやらラリアットとの会合は現実世界では数秒程度だったらしく、俺は傍から見るとぼーっと突っ立っていただけに見えていたらしい。



「こんなときに何寝ぼけてんだ」

「……ごめん」

「??」

「!それより緑谷は!?」



麗日と心操のおかげで緑谷は“黒鞭”の暴走を抑えられたらしく演習は続行。
A組は緑谷を、B組は物間を囮に隙を着く作戦から一変、1箇所に両チーム全員が集まり乱闘が始まった。

その時緑谷の腕に心操の捕縛布が巻き付き、引っ張られ力負けした緑谷は高台から引きずり降ろされてしまう。
その様子に砂糖が驚きながら口を開く。



「あの緑谷が力負けした!?」

「あの野郎…“個性”使わねえつもりか」

「それはつまり…緑谷は“無個性”で戦うつもりか!?一旦退くべきだと思うが……」



常闇の発言に俺は首を横に振る。



「心操が目の前にいる今がA組にとってもチャンスだ。ここで退いて心操を見失えば……A組は負ける」



峰田・芦戸ペアも各々の“個性”を生かした機転の利いた立ち回りで庄田・柳・子大を翻弄していく。
その様子を見た円場と吹出は苦い表情をうかべる。



「近接苦手な柳と子大二人を庄田一人で守んなきゃなんねェ」

「人数差が仇になってる!退きてェー!!」

「!!物間が動いた!」



鉄哲がモニターを指さしながら叫ぶ。
そこには緑谷と麗日目抜けて走り出す物間の姿があった。







一人で強くなれはしない。
主役を張れる性質にない。
君たちのように真っすぐ道程を歩けない。
でも僕はこの性質を恨みはしないのさ。

名作には必ずいるものだから。



「(避けきれなかった…触られた…!!)」



主役を喰らう脇役ってやつがね!!



「君の“力”もらったよ!!」

「(ワン・フォー・オールが!!?まさか────)待って物間くん危───…」

遅い!!







「……あれ?」

「物間の“個性”発動してねえぞ」



物間はそのまま麗日のGMAによってカウンターをくらい抑え込まれてしまう。
それを見ながら拳藤はあちゃーと頭に手を当てた。



「“スカ”か〜…!」



物間を助けようと捕縛布に手をかける心操に向かって麗日の“個性”によって無重力化した緑谷が飛び上がりやって来る。
心操を捕まえると同時に“ゼログラビティ”が解除されてそのまま取っ組み合いが始まった。

ワン・フォー・オールが使えないとしてもただの取っ組み合いなら緑谷が優勢。
だがそれを読んでいた心操は一瞬の隙をついて捕縛布を頭上に張り巡らされた配管などに括り付けており、緑谷から距離を取ったと同時に力を込める。



「“個性”使えない状況じゃやべーぞ!」

「万事休すか!?」



緑谷目掛けて降り注ぐ二つの大きなパイプ。
誰もがもうダメだと思ったその時だった。

緑谷の腕から“黒鞭”が発動され、自身に当たる前に受け止め回避する。



「また出たぞ!?大丈夫か!」



尾白の発言に周りのみんなも同じように不安そうな表情を浮かべる。
だが暴走していたさっきとは違い緑谷が“黒鞭”を操ることが出来ている。
と思った矢先、“黒鞭”は消えてしまい、痛みに耐えながら緑谷は膝を着いてしまう。



「!(ワン・フォー・オールの進化に身体が追いついてないのか…!)」



ワン・フォー・オールはもともと強力な“個性”だ。
そこに今回新たに発現した“黒鞭”も。

ラリアットは今後緑谷に6つの“個性”が発現すると言っていた。
もし他5つも“黒鞭”のように強力な“個性”であれば…緑谷の身体への負担も大きくなる。



「…………」

「麗日が物間を捕らえたな」

「これで4対4だが─────」



心操を追いかける緑谷に物間が仕込んでいた“ツインインパクト”が発動し頬に殴られたような衝撃を加えられ怯んでしまう。
そして峰田も庄田に捉えられてしまい、3対1と芦戸が追い込まれてしまい形勢逆転。
A組にピンチが訪れる。



「よっしゃ!一人捕まえればあとは楽だ」

「芦戸が!まずい!!」

「心操もうまく距離を取った!いけるぞコレ────…逆転」

「!まだだ!!」



体制を崩しかけた緑谷だったがなんとか律し、近くの壁を上手く蹴りあげ心操へ人間砲弾のように突っ込んでいく。
心操は捕縛布を投げ捕らえようとするが、逆に緑谷に捕縛布を掴まれそのまま自身へ手繰り寄せられてしまう。

一方の芦戸たちは物間の収監を終えた麗日が参戦し隙を着いて柳と子大を捕らえることに成功。
それに目を奪われた庄田の一瞬の隙を逃さなかった芦戸が拳を叩き込み戦闘不能に。



《第5セット!なんだか危険な場面もあったけど4-0でA組の勝利よ!!》

「ってことは────」

《これにて5セット全て終了です。全セット皆、敵を知り、己を知り、よく検討しました。第1セットA。第2セットB。第3セットドロー。第4セットA。第5セットA。よって今回の対抗戦!》



───A組の勝利です!!!





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