◎ 忘れないでいたいよ(5/7)
「おつかれさま。今日も遅かったわね」
「仕事が立て込んでてな…………ああ。お茶子、まだ起きてたのか?ただいま」両親はいつも疲れた顔をしていてそれが辛かった。
「わあああ!!!」
「ありがとうヒーロー!!」
「かっこいー!!」
初めてヒーロー活動を目にした時、活動よりも周りの人々の表情に目が行った。
人の喜ぶ顔が好きだった。
だから困ってる人を助ける事は当たり前だった。
その当たり前がいかに大変なことなのか。
「目の前の……小さな女の子一人救えないで────皆を救けるヒーローになれるかよ!!!」
余裕がなくて必死に助ける彼を見てきたから思う。
ヒーローが辛い時、
誰がヒーローを守ってあげられるだろう。
「デクくん落ちつけ!!」
「止めっ…られ、ない!」
これはデクくんの意思じゃない!
“個性”が暴走してしまってる…!
私一人じゃ…どうしたら……。
「!!(心操くん!)」
そうだ。きっと彼なら────
「
心操くん!!洗脳を!!デクくん止めてあげて!!」
◇
「!」
緑谷に洗脳を!
何か!!
何か問う…。
「誂え向きの“個性”に生まれて────」
体育祭でおまえに負けた。
「心操くん!たしか前も相澤先生と一緒にいたよね」
「まァね」
ワクワクしてた。
あの時とは違う俺を見せてやれるって。
「俺は立派なヒーローになって、俺の“個性”を────」
また戦えるって!
楽しみにしてたんだぜ!!
「人の為に使いたい」
俺の声で、おまえに伝える。
「
緑谷ァ!!」
今度こそおまえと同じ…対等な立場で!!
「
俺と戦おうぜ」
少し強くなった俺を見てくれ。
「〜〜〜〜ん゛ん゛お゛お゛
応!!」
心操の言葉に答えた瞬間、体の自由が心操に渡り緑谷の暴走が止まった。
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