◎ 忘れないでいたいよ(1/7)
「「…………」」
《わずか5分たらず…!!思わぬチームワークでA組4-0の勝利だ!!》
轟と一緒に演習場に戻ってきた頃には既に4組目の勝負がついており、その速さに俺たちは立ちすくんでいた。
「4組目ってだれがいたんだ?」
「A組は爆豪、耳郎、瀬呂、砂糖でB組は取蔭、凡戸、泡瀬、鎌切だ」
「取蔭って…確か轟と同じ推薦組だよな!なのに4-0の完全勝利……すごいな!!」
「……また嬉しそうだな」
「“また”?」
「職業体験後の演習でも緑谷見ながら同じようなリアクションだったなと思って」
轟も小さく笑った。
「……すごいな。みんな」
「……」
俺は轟の肩に腕を回す。
そして笑いながら言った。
「轟だってちゃんと進んでる!自信もってこーぜ!」
「!……ありがとう」
……といいつつも─────
「あ〜〜〜!やっぱり俺も参加したかったああ……」
「!」(ビクッ)
「!ハル少年!轟少年!」
名前を呼ばれて顔を向けると授業の見学に来ていたであろうオールマイトとその隣にミッドナイト先生がいて、その近くに講評を終えた爆豪たち4組目のチームメンバーがいた。
俺に気づいた耳郎が手を振る。
「あ!ハルー!」
「!」
その時、背を向けていた爆豪がぐるっと俺の方に振り返る。
そして俺を見るや否や、話しかけに来ようとした耳郎を押し退けて物凄い形相でまっすぐ俺に近づく。
「ば、バクゴーおつかれさ────「
遅ぇんだよ!!!」
なんで怒鳴られたかわからなくて思わず笑顔が引きつる。
それまで別に機嫌が悪かったわけでもないみたいで耳郎たちの頭にハテナが浮かんでいた。
でも爆豪はそんな俺たちに気にすることなくまっすぐ俺を見つめた。
「ぼけぼけしてっと追い抜かすぞ」
「!」
爆豪はもともと才能がある。
でも今はそれにあぐらをかいてるだけじゃない。
自身を客観視して、どうすれば良いのか模索しながら進むことが出来る。
「……ああ」
「!」
「俺も負けない。見てろよ。爆豪」
こんな挑発的な発言、普段の爆豪ならブチ切れ待ったなしなはずなんだけど、この日は違った。
「……出来るもんならやってみろ。俺は更に先に行く。だから────ちゃんと見とけ。寝坊助」
爆豪の口角が少し上がっていた気がした。
「…ああ!」
「(爆豪少年と緑谷少年。そしてハル
少年。……良い友達を持ったな)」
「(……青春!!くすぐったいわ…っ)」
「やっぱり爆豪、ハルのこと大好きじゃ────」
「なんか言ったか!しょうゆ顔!!」
「瀬呂な!なんも言ってねーよ!てか轟も大丈夫かー!?」
「ああ。リカバリーガールに治癒してもらったから大丈夫だ」
俺は戻ってきたことを直接伝えるべく相澤先生の元へ駆け寄る。
「水科。戻ったか。どうだった?」
相澤先生もやっぱり気にしてくれていたみたいで真っ先に結果を聞いてくれた。
問題ないことを伝え、今後の動きを確認させてもらった。
「次で最終だ。しっかり見とけ」
「おお。水科戻ったか」
「ブラド先生」
「お前にも見せたかった。我がかわいいかわいいB組の活躍を────」
「(ん?)」
ブラド先生ってこんなキャラだっけ────?
「……」
「あーいつものことだから気にしないでね」
「ミッドナイト先生!」
「そういえばイレイザーから聞いてるかしら?今日はスペシャルゲストがいるのよ」
「スペシャルゲスト?」
「それはね────」
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