◎ 繋がる思い(7/7)
状況の整理しているのか少しぼーっとしている轟に対して飯田は声をかけた。
「俺がもっと速ければ勝てた内容だった」
「飯田。……とハル?」
ハルは二人の話を邪魔しないようにと黙ったまま轟に軽く手を振った。
「俺はまだまだ遅い。骨抜くんの柔軟なスタイルに対応できなかった!」
「…………助けてくれただろ。朧気に覚えてる。おまえは速いよ。俺が遅いだけだ。俺が遅いから心配かけさせちまった。安心させられるようなヒーローになんなきゃ…」
轟の脳裏には幼い頃にテレビで見た圧倒的No.1ヒーローのオールマイトの姿。
そんな轟に対して、飯田は怪我を負っている左手を勢いよく振り上げながら言った。
「いや!君が頼りない等は決して…痛っ!!」
「こらこら。傷開くぞ」
「俺はいつでも“誰の元へでも”駆けつけるんだ。インゲニウムを継ぐ者の信念だ」
そう飯田が言い終えると同時に轟の横の仕切りになっていたカーテンが開かれる。
そこには目を覚ました骨抜がいて、骨抜はそんな飯田と轟に向かって言った。
「炎の件とかレシプロとか正直俺も課題残ったままなんでまた相手してくれない」
「「もちろん」」
そんな三人を見て、ハルとリカバリーガールは顔を見合せて頷く。
「あんたら元気になったんなら早く戻りなさい!ダベる場所じゃないんだよ!」
「は!失礼しました!」
「じゃあ俺先に戻るね。轟はそれ食べてから戻りなよ」
飯田と骨抜はそういうと保健室を後にした。
轟はリカバリーガールからもらったスニッカーズをかじる。
「リカバリーガール。片付け終わったけど俺も戻った方が良いですか?」
「ああ。帰ってきて早々すまないね」
「いえいえ」
「あんたにもこれあげるよ」
そう言いながら渡されたスニッカーズをハルは嬉しそうに受け取り早速封を切ってかぶりつく。
そんなハルを見ていた轟の視線に気づき、頭に疑問符を浮かべながら首を傾げた。
そしてハッと何かに気がつくとスニッカーズを二つに割ってかじってない方を轟に差し出した。
「まだお腹減ってんだな!“治癒”は体力使うもんな〜」
「いや違う」
「違うんかーい」
なんだと言いながらハルは笑う。
轟はぽりぽりと頬をかきながら検査結果について尋ねた。
するとリカバリーガールも気になっていたのか作業していた手を止めてハルの方を見る。
「詳しい結果は後日届くけど、現時点では問題なしだって。気にかけてくれてありがとな」
「!(ホッ)」
「リカバリーガールもありがとうございました」
「とりあえず一安心だね」
はい。とハルは笑った。
そしてスニッカーズを食べ終え立ち上がると轟の方を見ながら言った。
「轟も戻ろうぜ」
「ああ」
「じゃあリカバリーガール。また────?」
リカバリーガールはじーっと二人を見つめる。
その様子にハルと轟は同じように首を傾げる。
「あんたたち仲良いね。良いことだ」
「「……」」
黙って顔を見合わせる。
すると耐えきれなくなったハルがぷはっと笑う。
それに疑問符を浮かべてぽかんとしている轟に手を差し出すとニッと笑った。
「行こう。轟」
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