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 過去、そして(6/6)



「!!」



突然意識が浮上する。
同時に右目の奥がかっと熱くなって、驚いた俺は右目を手で押さえながら勢いよく起き上がる。



「はあ…はあ……」



だけどそれはほんの一瞬のことですぐに何事も無かったかのように熱はひいていった。
俺の物音に目を覚ましたリカバリーガールがベッドの周りを囲むカーテンをめくり中を覗きながら声をかけた。



「大丈夫かい」

「あ……はい。すみません。驚かせちゃって……変な夢見て……」

「……そうかい。とりあえずこれで体拭きなさいな」

「!」



リカバリーガールにタオルを渡されて自分が汗だくになっているのに気づく。
ベッドを汗で汚してしまったことを謝りつつ、受け取ったタオルで汗を拭っていく。

リカバリーガールはお茶でも入れてくれているのかカチャカチャと食器の音を鳴らしながら俺の体調を尋ねた。
すると不思議なことに寝る前まで酷かった頭痛が嘘のように収まっており、その事をリカバリーガールに伝えると安心したように息をついた。



「なら良かったよ。はい。これでも飲んで」

「(いい香り……)ありがとうございます」



緑茶の香りが落ち着く。
一口飲むと暖かいお茶が食道からお腹、と体の中を通っていくのがわかった。



「……」



先程見た夢を今も鮮明に覚えている。

菜奈さんを初めとする継承者たちの凛とした表情。
オール・フォー・ワンの過去の過ち。
暴動により起き荒れ果てた街並み。
俺と共にそれを見つめる緑谷の姿。




「でも……君たちならきっと大丈夫だね」




そして初代の光が宿った真っ直ぐな瞳。



「(これは夢じゃない…?考えられるとしたら…………そう)」




ワン・フォー・オールの中に眠る意思。

継承した者の“記憶”だ。





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