アトラクトライト | ナノ

 過去、そして(4/6)



「!(他の継承者たちが───!)」



菜奈さんたちが俺と緑谷、そして二人を残して黒いモヤとともに消えてしまう。



「そのまま返すよ。おいで」



ワン・フォー・オールがそう手招きすると奴の背後…俺の目の前に二人の男が現れる。



「彼は顎部が変容した。牙が生え変わり続けるようだ。内気だが置いた両親の世話を欠かさない優しい子だよ。そんな彼は怪物だと、病気だと、迫害を受け両親からの隔離されてしまった」

「(後ろ姿で顔が見えない……でも恐らくこの人は“異径型”で牙が目立つような形で生えてるんだろう)」

「こっちの彼は“異能”を持たない。夕暮れの仕事帰り、“異能”集団に襲われたそうだ。頼みのスタンガンは無効化された上、触手状の毛髪に体の自由を奪われたと」

「!」



オール・フォー・ワンの会話に何か違和感を感じていた。
その違和感の正体がわかった。

なんで“個性”と呼ばず“異能”と呼ぶんだろうか。



「(これは────“過去”が再現されている…?)」

「ダメだ…!戻れなくなるぞ」



慌てて初代はオール・フォー・ワンの元に走り出そうとする。
だがオールマイトが言っていたように身体が弱いらしく、咳き込み座り込んでしまう。

初代の制止を聞かず、男二人はオール・フォー・ワンに何かを実行するよう催促する。
するとオール・フォー・ワンが二人の頭に手をかざし、牙の男から“個性”を奪い無個性の男に与えた。
すると牙の男は顔を触り牙がないことを確認すると喜びのあまり泣き崩れてしまい、もう片方の男は腕から突き出る牙を見つめていた。



「今後僕が困ったらその時は助けてくれるかい?」

「もちろんだ!!ああ…父さん母さん…!ありがとう本当に…!!」

「この恩は一生忘れない」

「おまえの言う“世界”とは何だ?弟よ?おまえは何が見えている?僕は“人”を見て“人”の為に行使している」



一件すると耳障りの良い言葉に聞こえる。
だけどそれを発言しているのはあいつだ。



「詭弁だ…!あんたは今小間使いを二人増やしただけだろう」

「縋れるものが必要なんだ。おまえは僕を否定する事で彼らの幸せまで否定しているよ。人の形を失ったこの世界、僕の力なら秩序を齎せる。エゴを通そうと必死なのはどちらだろう?」

心の隙につけ入ることの何が秩序だ!!そうやって弄び使い捨てた人の数をおまえは覚えちゃいないだろう!!



飛びかかろうとする初代に対して、オール・フォー・ワンの用心棒が当然現れて抑え込む。
だがその時もオール・フォー・ワンは弟の体調を気遣っていた。



「ああ…可哀想に。“異能”を持たずに生まれたばっかりに…力が無ければ通せる道理もない。それでも僕はおまえを愛しているよ。哀れな弟…唯一の肉親」

「!!」



オール・フォー・ワンの初代に対する歪んだ愛情に思わず鳥肌が立った。





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