◎ 過去、そして(1/6)
エンデヴァーは重傷を負うもリカバリーガールの治癒によって一命を取り留めた。
だが戦闘で負った顔面の傷跡は綺麗にはなくならず、痛々しく残ってた。
荼毘に関しては後から合流したミルコが追うも見失い敵連合の手がかりは掴むことは出来なかった。
《あの戦いから二日。No.1ヒーローに対する評価が揺れ動き続けています》
《ああも辛勝だとねえ…大丈夫なの彼?血だらけだったじゃない》
《また連合逃したんでしょ?》
《そもそも脳無ってもういっぱい捕まえてんでしょ?そういうレベルの敵に苦しめられても────》
エンデヴァーに対する不安の声は変わらずあって、夕飯を食べながらついていたテレビから流れるニュースのインタビューでもその様子が放送されていた。
その一方で変わったこともある。
《おらん象徴(もん)の尾っぽ引いて勝手に絶望すんなや!今俺らの為に体張っとる男は誰や!!見ろや!!!》
《エッジショットファンだったんですけど!あんなんファンになるしかなくないスか!?》
《僕も炎系なんで素直に喜ばしいですよ》
《やっぱ“見ろや君”でしょ!》
《誰や!見ろや!はっとさせられた》
あの日にカメラに向かって今のNo.1であるエンデヴァーを見ろや!と叫んでいた少年は一躍時の人となっていて、彼の叫びが多くの人の心をエンデヴァーに引き寄せた。
その人気っぷりは凄まじく見ろや君の顔がプリントされたマグカップやTシャツを作ってみたと投稿する人もいるようだ。
《いやーあの戦いね!エンデヴァーはもちろんだけどね。“見ろや君”、そして何よりホークスの献身が大きかったよ。皆がね一丸となったもん。応援するんだって。向かい風は止まないだろうけどね。皆もう気づいたよ。エンデヴァーの時代だってね。彼を支持する声は確実に広がっているもの》
No.1ヒーローとしてエンデヴァーが受け入れられつつある社会に俺たちも安堵の息を吐く。
そして一つ空いた席を見つめていた俺に隣にいた緑谷が声をかけてきた。
「轟くん、無事に着いたかな?」
エンデヴァーの退院の日に合わせて轟は一度実家に帰るらしい。
久々の一家団欒での食事。
轟家は過去に様々なことがあったようだけど、少しずつ歩み寄りあって、前に進もうとしていた。
「かな。実家であいつの好きな蕎麦でも食べてるんじゃない?」
「……そうだね!」
そう言って俺らは笑いあった。
prev|
next