◎ 彼は何故立ち続けたか(2/6)
《突如として現れた一人の敵が!!街を蹂躙しております!ハッキリと確認出来ませんが“怪人脳無”も多数出現しているとの情報が───現在ヒーローたちが交戦・避難誘導中!》
街は一気に破壊され、人々の平穏が一瞬にして奪われていく。
圧倒的な力を持つ一人の敵に苦戦を強いられ、重傷を負うNo.1ヒーロー。
まさに地獄のような光景。
まるで───
《この光景、嫌でも思い出される3ヶ月前の悪夢───…》
「君が奪ってきたものを奪う」
その時、倒れていたエンデヴァーが急に起き上がり脳無目掛けて攻撃を仕掛けにいく。
だがそれを軽々と避けるとエンデヴァーの体に自身の伸びた左手を巻き付けるとそのまま雑居ビルに投げ飛ばす。
あまりの速さにヒーローたちも呆然と立ち尽くしていた。
《エンデヴァーは…オールマイトにはなれない…》
《てことはこのままだと俺らはあいつに殺され───!!》
誰かの言葉が皮切りになった訳では無い。
恐怖の顔を浮かべ、我先にと避難しようと集まりごった返す人々。
伝播する不安が混乱を招く。
《どけって!!》
《わああああん!!》
《大丈夫です!!落ち着いて!大丈夫ですから!》
《うるせーよ!!どけ!!》
これが象徴の不在。
「パニックだ…!マズいぞ」
「TVつけたら…エンデヴァーが!」
「轟…!」
「せんせ!」
「もう見てたか…!」
テレビの前の面々も不安隠せない中、轟が何か呟くのが聞こえた。
「ふざけんな…」
「!」
《
てきとうな事言うなや!!》
突然テレビから聞こえてきた少年の大声。
思わず俺たちはテレビに目を向けると逃げ惑う人々の中、一人の少年がテレビのカメラ目掛けて叫んだ。
《どこ見て喋りよっとやテレビ!やめとけやこんな時に!あれ見ろや!》
少年の指さした先をカメラが映す。
そこにはエンデヴァーのものと思われる炎が見えた。
《まだ炎が上がっとるやろうが。見えとるやろが!!エンデヴァー生きて戦っとるやろうが!!》
《ガチすぎやろ。やめろや!はよ逃げよって!!》
後ろからその友達と思われる子たち二人が少年の手を引く。
だが少年は引かずに続けた。
《
おらん象徴(もん)の尾っぽ引いて勝手に絶望すんなや!今俺らの為に体張っとる男は誰や!!見ろや!!!》
「!」
テレビの画面は少年から脳無を上空か捕らえた映像へ移り変わる。
《あっ!!黒の敵が……あ!!避難先へ!!ああ!!》
脳無を追う煌々と燃える炎。
《追っています!
エンデヴァーーーー!!!!》
ボロボロで動かすことすら困難なはずの体を自身から放たれる炎の火力で押し出すことで脳無へと向かっていた。
追撃を受けても、意識の糸が切れないよう常人とは比べ物にならない精神力でエンデヴァーは敵に向かっていた。
「……すげえ…」
そこにやって来たNo.2ヒーローのホークス。
エンデヴァーの背中に自身の羽をつけて、更にスピードを加速させていく。
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