アトラクトライト | ナノ

 まろうど(4/4)



その翌日。
学校の準備に追われて忙しなくA組面々は行き交っている中、靴箱前で俺は昨日デーマンドたちからもらったスニーカーを眺めていた。



「(このフォルム……たまんねえ……!俺の大好きな寒色系だし……どっからどう見ても完璧過ぎる…!!もったいなくて履けな───)」

「邪魔」



爆豪の靴箱は俺の上にあって、言葉通り靴を取るのに俺が邪魔だったらしくどんとぶつかって来た。
朝の急いでる時に確かに邪魔だったか、と爆豪に謝って避けつつ俺もスニーカーを手に取る。



「……!(ハッ) 爆豪!!」

「!(ビクッ) …なんだよ」

「今日の天気わかる!?雨降る!?」

「ハァ?」

「雨降ったらスニーカー汚れるから…降るならおろすの止めとこうかと───」



ピキっと爆豪の額に青筋が浮かび上がる。
あれ?俺やっちゃった?



「どーせ靴なんかすぐ汚れんだろ!今日は降水確率0%の快晴だ!!早くそれ履いてどけ!!失せろ!!」

「うわーごめんって!」



そんな俺らのやり取りを見ていた上鳴、切島、瀬呂の三人は笑った。



「天気予報士カッチャン爆誕!」

「誰が天気予報士だ!」

「バクゴーちゃんと天気見てんのマメだなー」

「つーかハルも汚れんの気になんなら撥水スプレーしとけ。ちょっとはマシだぞー」

「そっか撥水スプレー!瀬呂天才!」

「だろ?」

「ってかこんなことしてる場合じゃねえ!遅刻すんぞ!」



切島の言葉にハッとした俺たちは慌てて教室へと走って向かう。
おかげで予鈴には間に合って、相澤先生のSHRが終わると時間割通りに授業が進んでいく。
そして放課後、俺は保健室に来ていた。



「リカバリーガールこんにちはー」

「あら。水科かい」

「今日はよろしくお願いします。あ、これ新作味のペッツあったのでどうぞ」

「あらあ、ありがとうね。じゃあ私からは定番味ペッツ。お食べ」

「ありがとうございます」



いつも特訓を見てくれてるお礼にと持ってきたのに、ペッツの交換し合いっこみたいになってしまって俺は笑った。
いつものようにリカバリーガールから治療関係のことを学んでいると保健室の扉が開く。



「リカバリーガールいますか…?」

「天喰先輩?」

「!や、やあ……水科くん」



扉の向こうには天喰先輩の姿。
体操服姿なのを見るに自主練でもしていたんだろうか?



「こりゃまた派手にやったねえ」

「いえ、かすり傷なので」

「かすり傷と言えど侮ることなかれだよ」



天喰先輩の右腕から血が流れていた。
先輩はかすり傷と言ってるけど、切り傷はそこそこ大きく出血が続いており、血が止まりそうな気配はない。

じーっとその傷の様子を観察していた俺に気づいたリカバリーガールは口を開く。



「水科。あんた手当してあげな」

「!」

「この子には私が指導してるから大丈夫よ。ねえ?」

「はい。任せてください」



現場でなし崩し的に手当を行ったことはあったけど、リカバリーガールに代わって手当を行うのは初めてだ。
ちょっと緊張するけど……先輩が不安にならないように、安心してもらえるように、間髪入れずに返事をするように意識した。



「(まず傷口を綺麗にして───切り傷はガーゼを当てて手のひらで圧迫して止血する)」

「……」

「先輩痛くないですか?」

「うん。大丈夫」

「(出血落ち着いてきたかな?消毒してガーゼで抑えてズレないように…腕だからテープより包帯の方が良いか?)」



リカバリーガールから教わったことを一つ一つ思い出して、素早くかつ丁寧に処置を進めていく。



「出来ました。動かしにくくないですか?」

「うん。問題ない」

「なら良かったです!」



チラッとリカバリーガールを見ると笑顔で頷いてくれて、俺はほっと息をつく。



「……すごく手際良かった。すごいね」

「!いえいえ。リカバリーガールのおかげです」

「教えたかいがあったよ。簡単な処置ならもう大丈夫そうだね。後は場数を踏めば自然とマスターするさ。そうさ。場数と言えば───…」



リカバリーガールが何か言いかけた時にスマホの着信が鳴り響く。
その音の主はリカバリーガールの携帯電話でもしもしと電話に出て一言二言話すと神妙な面持ちに変わっていく。



「すぐに向かうから待ちなさいな」



リカバリーガールは電話を切ると俺と天喰先輩に言った。



「急用が出来たからここを閉めるわね。しばらく帰らないかもしれないから忘れ物しないようにね」

「急用?どこに行くんですか?」

「九州よ。エンデヴァーが脳無と戦って負傷してるんだと」

「「!」」



それを聞いて俺は慌ててスマホを開くと天喰先輩も画面を覗き込んだ。

ニュース…それよりSNSの方が早いか。
アプリを開いてスクロールしていくとある投稿が目に留まる。


《No.1ヒーロー エンデヴァー。怪人脳無の攻撃を受けて重傷!?》
その文面と共に投稿された動画には脳無の攻撃を受けて倒れ込むエンデヴァーの姿。
特に顔の傷が酷く、口から左上にかけて抉られたような傷がありとめどなく血が流れていた。



「!」



俺は二人に謝り、慌てて荷物をまとめると保健室を飛び出した。




「(轟…!!)」





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