アトラクトライト | ナノ

 まろうど(3/4)



「そういえばお前に来賓だ」

「え!?」



心操との訓練が一区切り着いた時に相澤先生から急に伝えられた。
エリちゃんにプッシャーキャッツ・洸汰と珍しく来賓が続くなあ…。
じゃなくて!!



「(約束の時間までもうギリギリじゃんか!相澤先生知ってたくせに───!)」



時間がなかったから体操服のまま寮に向かう。
だがみんなは来賓が来ることは知っていたらしく、俺が戻ってくる前に準備をしていてくれていた。



「砂糖、お茶ありがとう」

「なんのこれしき。茶葉はヤオモモが選んでくれたやつだぜ」

「実家から新しい茶葉がちょうど届いてましたの」

「ヤオモモもいつもありがとうな」



その時、チャイム音が響き渡る。
近くにいた飯田が出てくれて、俺も後を追う。
扉を開けて現れたのは意外な人物。



「や、やあ…久しぶりだな。ハル」

「デ…デーマンド!?」



今日の来賓はまさかのデーマンド。
もちろん知らされていなかった俺は目を丸くして驚きを隠せずにいるとやっぱりと言わんばかりにデーマンドは渋い顔をしながら漏らす。



「ヘルパットにハルには事前に言わない方がサプライズになると言われたが……やっぱり事前に伝えておくべきだった…!」

「ヘルパットらしいですね(それに素直に従っちゃうのはデーマンドらしいな…)」

「二人とも。立ち話も何ですから中に」



飯田に勧められてデーマンドを寮内へと通す。
するとみんなデーマンドを見るや否や、先日のビルボードチャートで20位に急上昇し特集に取り上げられたことが後押しし知らない人はおらず、「あー!!」と感激の声を漏らすやつもちらほら。



「うお!デーマンドだ!生で見るの初めて!!」

「そっか!ハルの職業体験先のサイドキックだもんな」

「デーマンド。ぜひ色々と話を───」

「…………」



今まであまりもてはやされた経験がないと聞いていたけど、置かれた状況にデーマンドは耐えきれなくなったのか顔を赤く染めながら俺に手に持っていた大きな箱を押し付ける。



「これ土産だ!みんなで食べてくれ!!」

「え、あ、はい。ありがとうございま───」

「!これ東京で有名なタルトのお店ですわ」

「ヤオモモも知ってるんだ!テレビで取り上げられてて気になってたんだよねー!」

「デーマンド。ありがとう!!」



すると今度はタルトに群がった女性陣に囲まれてデーマンドはあわあわと対応に困っていた。
見た目は屈強でかなり強面なのに口下手で照れ屋な性格が世間でも受けているらしくそのギャップに根強いファンが増えてきていると聞いたけど……確かに、こういうところ…なんというか……可愛いかも。
なんて本人には言えないけど。

でも他のみんなもそう思っているのかニコニコとその様子を見守っていた。
確信犯たちめ…。



「良かったらお茶飲んでってください」

「ありがとう。だが俺もすぐ行かなくてはな」

「デーマンドはどうして雄英に?」

「これをお前に渡しに来た」



タルトとは別に持っていた大きめな紙袋を俺に手渡す。
なんだろうと中を覗き込んでみると箱が入っていた。
開けても良いかとデーマンドに目配せすると砂糖から受け取ったお茶を飲みながら良いぞと右手を差し出す。

みんなも何が入っているのか気になってるらしく注目が集まる中、紙袋から箱を取り出す。
するとそれは靴箱で見覚えのあるロゴに俺は興奮を抑えきれないまままたデーマンドを見る。
デーマンドは笑いながら先程と同じような仕草をし、中を見るよう促す。



「これ────!!」

「うっわ!めちゃくちゃかっけースニーカー!」

「てかこれハルが欲しいって言ってたやつじゃねえの?」



瀬呂の言う通り俺がずっと欲しいと言っていたモデルのスニーカー。
でも高いし買うのを諦めてて……。



「これ───どうして?」

「うちの事務所全員からの仮免合格祝いだ。本当は郵送しようと思ってたんだがヘルパットに直接渡しに行けと言われてな」

「…………」



めちゃくちゃ嬉しい。
嬉しいんだけどこんな高いもの受け取れ───



「気に入らなかったか?」

「!」



不安げにデーマンドは俺を見つめる。
折角くれたプレゼントで、ましてやずっと俺が欲しかったものなのに、そんな顔して欲しくない。



「嬉しいですよ!すっっっっごい欲しかったですもん!!」

「力の入りようからガチだな」

「違いない」



上鳴・峰田のいじりが聞こえる。
でもそれに反応を示す余裕もなく俺は言葉に詰まらせる。
それにますます困惑するデーマンド。

そんな俺らを見かねた飯田が言った。



「ハルくんはこんな高価なものをと申し訳なく思ってるんだな」

「!そうなのか?」

「え…まあ……うん」



それを聞いたデーマンドは安心したように小さく笑みを零す。



「そんなことか。安心しろ。メンバーで折半したから大した額じゃない」

「(このデカブツ、ズレてんな)」

「それに───欲しいものだったならそんなことを気にせずに喜んでもらえた方がやつらも嬉しいだろうな」

「!」



ヘルパット、サイドキックのみんな。
確かにみんなこんなことで何かを言う人たちじゃない。
数日間だったけど一緒に過ごしてきてそれを俺はよく知ってるはずじゃないか。



「デーマンドありがとう」

「……ああ」





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