◎ 許されざる者(5/10)
敵の襲撃もなく無事に警護は終了。
俺たちはデーマンドと共にもんじゃ焼きを食べに来ていた。
「今日はありがとう。おかげで無事に会談を終えることができた」
「なんてことない。だが俺らに付き合っておまえもここにいて良かったのか?」
「ええ。所長からもてなして来いと言われてて…」
「ヘルパットはどこにいるんですか?」
「あいつは今日も仕事だ。どこにいるかは俺らもわからん。極秘だなんだと話してくれないからな」
デーマンドはそう言うと少し悲しそうな表情を浮かべた。
そんな時、店員さんが頼んでいたもんじゃセットを持ってきてくれた。
「明太もちチーズとベビスターもんじゃです!ごゆっくりどうぞ」
「安定に美味しいやつだ」
「これどうやって焼くんだ」
「「「「…………」」」」
轟の言葉に全員の視線がデーマンドに向かう。
だがデーマンドは少し気まずそうに視線を逸らす。
「実はもんじゃ焼きに来るのは…初めてでな」
「関東人ならもんじゃ焼けるじゃねーのか!?」
「俺の生まれは東北だ。上京してからもんじゃは食べたことがない」
「なのによく連れてきたなァ……」
「ハル!轟くん!ここに焼き方書いてあるよ」
「えーっと…まずは野菜を焼いて土手作って……土手?」
「……とにかく全部鉄板で焼いたらいいんじゃないか」
そう言って轟が容器に入っているものを鉄板の上に全部出して焼こうとした時、爆豪が鬼の形相で轟の腕を掴む。
「ンなことしたら液が全部流れるだろ…!!」
「!そのための土手か」
「〜〜〜っ貸せ!!おいクソ寝坊助!テメーはその説明書き俺に見えるように持っとけ!」
「はいよ」
いても立ってもいられなくなった爆豪は説明書きを見ながらもんじゃを焼いてくれることに。
すると初めてとは思えない慣れた手つきでどんどん工程を進んでいきあっという間にもんじゃ焼きが完成した。
「どーだァ!」
「すごいな」
「なんて無駄のない動き…!」
「俺にかかれば朝飯前だっつーの」
「さっすが才能マン」
「バクゴーだったか。おまえ料理得意なのか?」
「得意も何も俺にかかればなんでもできちまうんだよ!」
「若いのに関心だな…」
爆豪の作ってくれたもんじゃ焼きを初め、鉄板焼きやお好み焼きなど、全部美味しくて、そんな料理を囲みながら俺はデーマンドに尋ねた。
「ヘルパット最近帰ってきてますか?」
「1週間に一度事務所に戻ってきてるかどうかといったところだ。どうした?奴に用事か?」
「いえ。電話かけてもなかなか出ないから大丈夫かなーって…」
「忙しいみたいで電話はほぼ繋がらんな。緊急事項であれば折り返しは来るが…まああいつのことだ、どうせ無理してる」
「!」
ならどうして止めないのか?
そう聞こうとする前にデーマンドは答えた。
「あれは俺らがいくら言っても止まらない。無理に止めればそれこそさらに無茶をする。本当に困ったものだ…」
「ヘルパットはいつもそうなのか?」
それを聞いていたエンデヴァーが尋ねる。
するとデーマンドは難しい顔をしながらも答えた。
「最近特に酷い。それこそ泥花市の一件以来ですね」
「あの事件以降、敵犯罪件数も増加の一途を辿っている。その対処で追われているのか……」
「かもしれない。ただ俺たちがやることはただ一つ。あの人を信じて、目の前の事件を解決するだけ」
「!!」
そういったデーマンドの瞳は真っ直ぐ前を向いていて、それはヘルパットに対する深い信頼関係がなければなしえない物だと悟り、俺は少し安心した。
この二人の信頼関係は一朝一夕で築き上げられたものではなく、長い年月、いろいろな体験があって築き上げられた深い絆なのだと。
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