◎ 許されざる者(4/10)
気づけば冬休みもあと2日となった。
そんな俺たちは今日も変わらずエンデヴァーの事務所でインターンをしていた。
時刻は早朝5時。
寝ぼけ眼な中、俺たちは車に揺られていた。
「おーいジャリンコ!もうすぐつくから寝るんじゃねーぞォ!」
「朝から大声出すな!!うっせェ!!」
「(爆豪もうるさい、って言ったら怒られるんだろうな)」
着いたのは駅。
今から新幹線に乗って東京へ向かうらしい。
配られたチケットを見て轟が不満そうにエンデヴァーへ訴えた。
「なんで俺がおまえの隣なんだ。笑えねぇ冗談か!?ハルたちの隣にしろ」
「てめぇまだ俺を友だちだと思ってんな?」
「い…いいだろべつに。それに前回受けた取材の原稿は1部しかない。隣の方が効率的だ」
「友だちの隣がいいっつってんだろ」
「友だちじゃねンだよ。屋根に括りつけて快適な新幹線旅楽しませたろか!!!」
俺と緑谷から少し離れたところでエンデヴァー、轟、爆豪がギャーギャーと騒ぎ始めてしまう。
それを見た緑谷があわあわとしながら俺の肩を掴み激しくゆすった。
「ど、どうしよう!?今からこんな調子じゃどうなっちゃうの!!?」
「みどりやーおちつけー」
「この状況落ち着いてられないよ!!」
反抗期の息子を持つ素直になれないパパ、エンデヴァー。
末っ子っぽいところが出ちゃってる轟。
人類と反りが合わない爆豪。
これが現日本No.1ヒーロー事務所とは思えない光景だ…。
でも発車時刻までそこまで余裕はないわけで、さっさと解決して乗り込むか。
「ストップです、御三方」
「「「!」」」
「3人席の窓側からエンデヴァー、轟、緑谷で2人席のところは俺と爆豪。これでいいだろ」
「なんでテメーと…!!」
「耳郎と約束してる“アレ”について相談したいんだよ。どーーしても爆豪の力借りないと難しくてさ」
「……フン。しゃーねーな」
フッ、ちょろいちょろい。
これで一件落着、と思いきやエンデヴァーが気まずそうに口を開いた。
「…今回はグリーン席を予約している。だから全て二人席だ」
「…………」
くっそ〜なんでこういう時に限ってNo.1の権力使っちゃうかな〜〜!!
かくなる上は…!!
「じゃあエンデヴァーが一人席ですね。体も大きいしそれが一番平和です」
「なっ…!?俺は焦凍と────」
「エンデヴァー」
「!」
俺はエンデヴァーの元に近寄ると小さな声で言った。
「エンデヴァーの背中を見る焦凍、ってのも悪くないですよ。子は親の背中を見て育ちますからね」
「!!!」
するとエンデヴァーはくるりと改札の方へ歩みを進める。
「貴様ら早く行くぞ」
「なんだよ急に…」
「ハッ。言われなくても行くわ」
「……ハル、エンデヴァーに何吹き込んだの」
「その言い方よくないぞ。ほら俺らも行こ」
「う、うん」
新幹線に揺られて1時間。
俺たちは大都会東京へと足を踏み入れた。
道行く…人!人!人!!
その混み具合に俺たちは圧倒されていた。
「すごいなあ…」
「ハルは職業体験の時に東京来てるよな」
「ああ。でもいつ来てもやっぱり圧倒される」
「今からタクシーで移動する。こっちだ」
さらに東京駅からタクシーに乗って約十分、俺らがやってきたのは国の要人が訪れるとされる立派な建物の前。
その荘厳な雰囲気に俺たちは口をポカンと開けて眺めていた。
そんな俺たちによく知る人物が声をかけてきた。
「エンデヴァー、着いたんだな」
「ああ。今日はよろしく頼む」
「!デーマンド」
「ハルも来ていたのか。No.1ヒーローが来てくれるとは珍しいと思っていたがそういう事か…今日は頼むな」
今日は他国の要人が訪問するとかでもともとヘルパットスターヴァー事務所が依頼を受けていたが、人手が欲しいという事でHN(ヒーローネットワーク)によって要請されていた。
それにエンデヴァーが手を挙げ、俺たち4人を連れて東京へ出張にきたと言うわけだ。
「んで、俺らはどこで敵をぶっ潰せば良いんだァ?」
「かっちゃん、まだ敵は来てないよ」
「ああ。お前たちは─────」
更衣室でコスチュームに着替え、指示された持ち場へ移動する。
だが爆豪は不満そうに叫んだ。
「なんで俺らが外の見回りなんだァ!!!」
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