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 まろうど(2/4)



翌日放課後。
ハルは相澤と共に訓練場に来ていた。
数日前に単体で初めて発現した“圧力”を特訓するためだが、発現時に暴走してしまった経緯もあり念の為“個性抹消”の可能な相澤にも来てもらったのだ。

ハルは目の前にあるコンクリートの塊に手を伸ばす。
するとメリメリと音を立てて押しつぶされていき、話に来ていたものとは裏腹にコントロールができている様子で相澤は目を見開いた。



「(“個性”の複数持ち……“個性”の掛け合わせ……)」




「“圧力”?」

「はい。俺の個性“譲受”により今扱えるのは“温冷水”と“圧力”で───今まで使っていた“ドライアイス”はこの二つを掛け合わせて発動させていたものだったようです」

「…………」

「…“個性”の掛け合わせなんて前例がないことかと思います。知らずに使っていたとはいえ俺も不安です。……だけど!この社会の平和を護るためにきっと必要な力になり得るものになるはず。だから───」

「!」

「相澤先生。力を貸してください」




そんなハルの様子を眺め、すっと目を閉じる。



「(“譲受”───強い個性には違いないが…難儀だな)」



水科と相澤はハルを呼ぶ。
それに応えてハルは“個性”の発動を止め、相澤に駆け寄る。



「どうしました?」

「“圧力”は俺が見る限り暴走することはなさそうだがその認識であってるか?」

「細かなコントロールはまだまだですが…暴走はしないと思います。お忙しいところありがとうございました」

「大丈夫だ。今度はこっちの都合に付き合ってもらおうと思っててな」

「?」



なんの事かわからずハルは首を傾げる。
相澤は扉の方に入ってこい、と声をかける。
すると扉が開き、そこから一人の少年が姿を現す。



「普通科C組の心操人使くんだ」

「確か体育祭の時に緑谷と戦ってた───!」

「どうも」



心操は体操服を身にまとい、首には相澤と同じ捕縛布を巻いていた。
ハルと心操には接点はなかったが、互いに体育祭などのイベントを通じて存在は認知していた。



「心操はヒーロー科への転入を希望していてな。転入テストに向けて俺と特訓している」

「心操の“個性”すごい強かったですもんね。無傷で敵の自由を奪えるのはヒーローにとって最適の“個性”だ」

「……!」



心操はハルの発言に目を丸くして驚く。
そんな心操にどうした?とハルは声をかけるがなんでもないと首を横に振る。



「俺は戦闘の基礎を叩き込んだ。だが如何せん他のヒーロー科連中に比べて戦闘経験が少ない。そこで───」

「俺がその相手になる、と」

「ご名答」

「水科」

「!」



心操はハルの名を呼ぶと手を差し出す。



「…悪いな。力を貸してくれないか」

「ああ!もちろん」



なんの躊躇いもなくハルは答えるとニッと笑い差し出された手を握り返すとそれにまた虚をつかれた様な顔を浮かべる。
そんな心操を見ながらハルに至っては疑問符を浮かべていた。

少しだけ心配そうな表情を浮かべながら心操は相澤に尋ねる。



「緑谷といい…先生、本当にA組大丈夫ですか?」

「ん?」

「俺の“個性”知ってて答えるなんて……」

「「……」」



ハルと相澤は互いに顔を見合わせた後、心操へと向き直る。



「そんなことか」

「そんなことですね」

「!」

「仮にお前が水科に“洗脳”を使っても俺が解除出来る。まあそれ以前に────」

「心操がその“個性”を悪用しないと思ったからさ。普通に返答しちゃった。だって───心操はヒーローになりたいんだろ?」



心操はポカンと言葉を失ったかと思うとぷっと吹き出す。




「悪ィことし放題じゃんか!!」

「私ら操ったりしないでよ〜!?」




「ヒーローに“最適な個性”なんて初めて言われた」

「……!」

「ああ。そうだな。そうだよな」



心操は顔を上げる。
そこにはまっすぐと明るい未来を見据えた瞳があった。





「俺は立派なヒーローになって、俺の“個性”を人の為に使いたい」





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