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 許されざる者(2/10)



爆豪と夏雄さんを抱きかかえ、二人の顔を見ながらエンデヴァーは叫ぶ。



「怪我は!?」

「ねェよ。離せ」

「熱い…」



二人の無事を確認するや否や、エンデヴァーは抱きしめた。



「加齢臭…!」



だが爆豪はそれが嫌だったらしくすぐに腕から抜け出す。



「白線野郎は!?」

「確保完了!」



そういいながら俺は笑った。
凍らされ身動きが取れない状況ながらも敵は涙を浮かべ、違う、おまえじゃだめだ、と戯言のようにぶつぶつと言葉を漏らした。



「クソデク!“モブ”はあ!?」

「知らない!“車に乗ってた皆さん”なら大丈夫!!」

「ということは……」

「完全勝利だな」



近くにいた轟に笑いかけながら拳を差し出す。
轟も小さく笑いながら自分の拳をこつんとぶつけてくれた。



「何だっけなァNo.1!!“この冬”!?“1回でも”!?“俺より速く”!?敵を退治してみせろ!?」

「…………ちょっと止めた方が良いか?」

「爆豪は間違ったこと言ってないし別に問題ないだろ」

「そうだけど……」



煽りに近い感じで爆豪はエンデヴァーに叫ぶ。
だがエンデヴァーからのリアクションは意外なもので…。



「ああ…!!見事だった…!!俺のミスを最速でカバーしてくれた…!」

「!」

「急にしおらしくなりやがって…!もちっとくやしがれ…」

「かっちゃん…」



エンデヴァーに抱きしめられていた夏雄さんはその腕を振り払いエンデヴァーから距離をとる。
だがエンデヴァーはそんな夏雄さんに怒るでも悲しむでもなくただ頭を下げた。



「夏雄…!悪かった…!!一瞬考えてしまった。俺が助けたらこの先おまえは俺に何も言えなくなってしまうのではないかと…」

「え?」

「夏雄、信じなくてもいい…!俺は“おまえたち”を疎んでいたわけじゃない。だが、責任をなすりつけて逃げた。燈矢も…俺が殺したも同然だ…!」



車のクラクションが鳴り響く。
そんな中でも夏雄さんの震える声がはっきりと聞こえた。



「疎んでたわけじゃない…?だったらなに…?俺はずっと燈矢兄から聞かされてきた。俺が許す時なんて…来ないよ。俺は焦凍みたいに優しくないから」

「…………」



夏雄さんが抱えていたエンデヴァーに対する本音。
今にも崩れてしまいそうな夏雄さんに俺らがかけられる声なんてない。
だからこそ────



「……それでも。それでも顔を出してくれるのは冬美と冷の為だろう。あの子は“家族”に強い憧れを持っている…俺が…壊したからだ。戻れる…そう浮き足立つ姉さんの気持ちを汲もうと頑張っているんだろう…!?」



エンデヴァーが伝えるしかない。



「おまえも優しいんだ」



だから……




「俺を許さなくていい。許して欲しいんじゃない。償いたいんだ」





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