◎ 許されざる者(1/10)
冬美さんと別れて、助手席にエンデヴァー、その後ろの座席に緑谷と轟、さらに後ろに爆豪と俺といった並びで座り、車で事務所へと向かった。
その最中、エンデヴァーは俺たちに早く力をつけさせるためにも週末に加え、平日も最低2日は働いてもらうと言った。
勉強とヒーロー業の両立は大変だけど…力を合わせて頑張るのみだ。
そんな時、運転手のおっちゃんが大きな声でエンデヴァーに言った。
「エンデヴァー!あんたいつからこんなジャリンコ乗せるようになったんだい!」
「(アグレッシブな運転手さんだ…!)」
「頂点に立たされてからだ」
「ケェーーー!!立場が人を変えるってやつかい!!」
なんともアグレッシブな運転手のおっちゃんに俺らは苦笑いを浮かべた。
その時、車の前方に浮かび上がるひとつの影。
近づき、ライトに照らされてその影が姿を現す。
「良い家に住んでるな!!」
地面の白線を操る男の姿。
そしてその白線にぐるぐる巻きにされ身動きの取れなくなっているもう一人の人影……あの人は────!!
「
エンデヴァー!!!」
「夏兄!!」
「頭ァ引っ込めろジャリンコ!!」
運転手のおっちゃんの間一髪の判断とドライブテクニックにより男と夏雄さんを避け、ひかずにすんだ。
そしてすぐにエンデヴァーは体制を整え扉から出ていった。
「彼を離せ!」
車を捕縛するように襲い来る白線。
だけど俺たちはエンデヴァーを追うべく、各々の個性で白線をやぶり車内から飛び出す。
俺、轟、爆豪はエンデヴァー達に向かって走った。
「忘れ物だぞ!」
トランクに入れていたコスチュームが車内から飛び出す。
それを緑谷が受け取ると俺ら三人に向かって投げた。
俺はゴーグル、と必要最低限の装備だけを装着して敵の動きを探りつつ向かった。
「夏雄兄さん!!」
「インターン生…俺の死を…仕切り直すぞエンデヴァー(マイホープ)!!」
「(体制を崩した。馬鹿め。チャンスだ今なら奴より早く────)」
「!」
俺らの中で一番近くにいて、誰よりも早く向かえたはずなのにエンデヴァーは突然足を止める。
その理由はわからない……けど!俺らがやることはただ一つ。
「俺の希望の炎よ!!息子一人の命じゃアまだヒーローやれちゃうみたいだな」
前方から襲い来る白線。
これならきっと────
「夏兄を離せ!」
轟から点で放出された強力な炎で白線は焼き尽くされ無効化される。
このままではやられる、そう悟ったのか敵は周りの道路の白線を操り、関係の無い人々が乗っている車を宙へ放り投げた。
「早く俺を殺っさせねェから!!死人が増えちゃうんだ」
捕まえていた夏雄さんを通りががったタクシーの目の前へ落としていく。
夏雄さんと一般市民の命が危険に晒されている状況。
だけど────
「増えねェんだよ!!」
爆豪の点で放出された爆破によって夏雄さんがひかれるよりも前に受け止め救出を成功させる。
そして────
「(エア・フォース!やれる!同じ!同じだ。要領は同じ!)」
「無意識下で二つのことをやれるように」
「そうだ。増えない増やさない───おまえの望みは何一つ」
緑谷の黒鞭によって宙に浮いた車を受け止める。
「(逃がさない…!!)」
逃げようとする敵に向かって圧力で押さえつける。
そして俺自身も圧力で飛び上がり上から温冷水で発生させた水を浴びせ、すぐにドライアイスで凍らせ身動きを封じる。
「叶わない!」
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