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 地獄の轟くん家(6/7)



「本当に大嫌いなら許せないで良いと思う」



「……それハルにも言われた。まさか緑谷にも同じこと言われるとは思ってなかったから……びっくりした」

「ハルが?」

「……!」

「インターン始まる前に一緒に課題をしてて、その流れで俺の部屋に泊まることになったんだ。その時に───」




「置かれている境遇も抱いていた感情も全く別物だ。表面だけ見て“なんで?”って思う必要なんてない。向き合うか向き合わないかは他人が決めることじゃない。それはきっと…当事者である自分達にしか決められない」

「……前も言ったろ。お前は……轟焦凍。焦凍は焦凍で…水科義晴にも緑谷出久にもなれない。だからそれでいいんだよ。お父さんのことを許せないなら許さなくていい」




「俺は俺のままでいいって、許せないなら許さなくていいって────俺が迷いそうになった時にはいつも声をかけて大丈夫だって笑ってくれる」

「焦凍………」



ガラガラ────



開けられたドアからは夏雄が顔を出す。
そして眉をひそめながら言った。



「姉ちゃん…俺先に戻るわ。ごちそうさま」



そう一言告げると夏雄は扉を開けたままその場を去っていく。
そして開け放たれた扉からハルが現れた。



「ハルくん、夏雄先に帰るって────」

「…はい。さっき聞きました」

「夏兄となんか話してたのか?」

「話してたって言う程じゃないけど…」



ハルは困ったように笑いながら頬をかく。
そして伏し目がちになりながら口を開いた。



「夏雄さん…無事に帰れると良いなって」

「!」

「?夏兄なら大丈夫だろ。うちにもよく来てる」

「(そういうことじゃねーだろ……!!)」

「……ハルくん。夏から…燈矢兄のことなにか聞いた?」



突然でてきた名前にハルだけでなく緑谷や爆豪も頭に疑問符を浮かべる。
その様子を見て冬美はあっ…と少し言い淀むが何かを決意したかのように真っ直ぐな目を携えて続けた。



「私たちは四人兄弟で一番上に燈矢兄がいてね。でも………今は亡くなってて…」

「お兄さんが…」

「それは話してないんだ」

「率先して話すもんじゃねェだろ」



轟の返答に冬美もそうかと納得した様子を見せた。



「夏は燈矢兄ととても仲良しでね…よく一緒に遊んでた。お母さんが入院してまもなくの頃だった…お母さん、更に“具合”悪くなっちゃって焦凍にも会わせられなくて…」

「……」

「でも乗り越えたの。焦凍も面会に来てくれて…家が前向きになって────夏だけが…振り上げた拳を下ろせないでいる。お父さんが殺したって思ってる」

「だからあんな面してたんか」

「…………」



ハルは話を聞き終えると俯いて拳を握りしめた。
そんな様子に気づいた緑谷が顔を覗き込みながら心配そうに声をかけた。



「大丈夫…?」

「!ああ、ごめん。俺は大丈夫…」



いつものように笑って答えたがその笑顔はすぐに複雑そうな表情へ変わっていく。
重々しい空気を悟ったのか冬美は話題を切り替えた。



「そういえばハルくんのお母さんは元気?」





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