◎ 地獄の轟くん家(4/7)
話していると冬美さんも残りの料理を持ってやって来た。
机の上には麻婆豆腐、餃子、唐揚げなどなど多種多様な料理が所狭しと並んでいた。
「「「「「「いただきます」」」」」」
「どうぞ。食べられないものがあったら無理しないでね」
「!どれもめちゃくちゃ美味しいです!!」
「ほんと美味しい!この竜田揚げ、味がしっかり染み込んでるのに衣はザクザクで仕込みの丁寧さに歓喜の────」
「飯まで分析すんな!てめーの喋りで麻婆の味が落ちる!」
この二人は相変わらずだなあ。
すると夏雄さんが口を開く。
「そらそうだよ。お手伝いさんが越しやっちゃって引退してからずっと姉ちゃんが作ってたんだから」
「なるほど」
「夏も作ってたじゃん。かわりばんこで」
「え!?じゃあ俺も食べてた!?」
「あーどうだろ。俺のは味濃かったから…………エンデヴァーが止めてたかも」
ピリッ
「「「!」」」
一瞬流れる不穏な空気。
俺だけじゃなくて、緑谷や爆豪もそれは察しているようだった。
「焦凍は学校でどんなの食べてるの?」
「学食で……」「気づきもしなかった。今度……」
「「「!」」」
運悪く轟とエンデヴァーの言葉が被る。
冬美さんが立て直そうとしていた空気がまた戻っていく。
すると夏雄さんがなんとも言えないしかめっ面のまま自分の食器を持って立ち上がる。
「ごちそうさま。席にはついたよ。もういいだろ」
「夏!」
「ごめん姉ちゃん、やっぱ無理だ」
そういって夏雄さんは部屋から出て行き、冬美さんは少し寂しげにその扉を見つめていた。
◇
食べ終わった食器を緑谷と爆豪と一緒に台所に運ぶ。
皿洗いをしているエンデヴァーにどこに置けば良いか聞くとシンク近くの台を指さす。
そこに食器を置いて残りの食器を片そうと廊下に出た時に緑谷が小声で言った。
「ていうかかっちゃんも知ってたんだ」
「は?俺のいるとこでてめーらが話してたんだよ」
「聞いてたの!?」
「実はそこに俺もいたんだ。爆豪と話してたところにたまたま緑谷と轟が来て、出るに出れずって感じで……」
「ハルもそこで知ったの?」
「一番最初はな。最近本人の口から聞く機会があったから轟は俺が知ってることはわかってるよ」
「そっか…!」
「あ、台拭き持ってくるの忘れた。取ってくる」
俺は台所に戻って台拭きを手に取る。
そして戻ろうとした時にエンデヴァーに声をかけられた。
「父親は…元気か?」
「前に電話した時は元気そうでしたよ。春頃に帰国するみたいです」
「……そうか」
「?父さんにエンデヴァーが会いたがってたって伝えておきましょうか」
「いや、大丈夫だ。俺からまた連絡しておく。気遣いありがとう」
「!」
エンデヴァーからまさかお礼を言われるとは…見ろや君が見たらどんなリアクションするんだろう。
というより父さんとエンデヴァーは知り合いだったんだ。
確かに歳も1個違いで雄英出身のヒーローだから接点があっても不思議じゃないか。
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