◎ 地獄の轟くん家(1/7)
スマホを片手にホークスはしかめっ面を浮かべていた。
そこに映し出されているのはヘルパットからのメッセージ。
自身の問いに対して、肯定も否定もする訳もなく躱してくる対応に思わずため息をついた。
「(本っ当に掴めない人だな……にしても…“俺らが似てる”ね……)」
普段なら特に気にしもしない言葉なのに、彼…ハルくんに言われてからやけにその言葉が俺の中に残っていた。
俺がヘルパットさんを苦手に感じる理由……それは彼に言われる前から既にわかっていて、向き合うより避ける方が楽だって分かっていたから今まで深く関わろうとしなかった。
「(だけど今は状況が異なる。味方は少しでも多いに越したことはない)」
俺は頭を書きながらスマホメッセージを打ち込む。
「(利用できるものは利用する。それは……あんたもだろ。ヘルパット)」
だから…俺を利用してみろ。
◇
その夜、無事にパトロールが終わり俺たちは事務所に戻った。
さすがNo.1の事務所というだけあって福利厚生が充実しており、トレーニングジムや宿泊施設、食堂などが完備されていて衣食住には困らないようなっていて俺たち四人はインターン中はずっと事務所に泊まり込んでいた。
四人で事務報告をすませて食堂へ向かった。
「ふわ〜〜っ…」
「でっけー欠伸」
そう爆豪から言われて慌てて口に手を当てる。
しっかり睡眠は取っているはずなのに……最近やけに眠いんだよな。
疲れとれてないのかなー……。
そんなことを思いながら食堂に向かうとバーニンがいて、俺たちに声をかけてくれた。
「おつかれー!どーだい!?ちょっとくらい追いつけたァ!?」
ちょうど食べ終えたところらしく手には空の食器を持っていた。
そんなバーニンに対して爆豪は顔を顰めていた。
俺たちはお疲れ様です、と声をかけたものの
俺らのヘトヘトの様子にバーニンは豪快に笑った。
「そんなんじゃウチじゃやってけないぞー!カツカレー食べな!今日のオススメ!!」
「(カツカレー…美味そうだな)」
それはみんなも同じだったらしく、緑谷はカツカレー大盛り、爆豪はカツカレー大盛り激辛、轟はカツカレーそばセットを注文していた。
俺の番になったものの……どうしようかな。
メニュー表を見るけど疲れで頭に入ってこずただ並んでいる文字を眺めるだけになっていた。
「(早く決めないと…)カツカレーと……うーん………」
「……ハル。腹減ってるか?」
そんな俺を見兼ねたのか轟が声をかけてくれた。
その問いに対して俺は頷く。
するとメニュー表を指さしながら言った。
「ならカツカレーうどんセットにしたらどうだ?お前あったかいうどん好きだったろ」
「確かに………じゃあうどんセットでお願いします」
「あいよー」
自分で選べや、と呆れた顔で爆豪には見られた気がするけど……気にしない気にしない。
注文してすぐにそれぞれのカツカレーが準備され、俺たちはお腹の空いた胃袋にそれを流し込むように食らった。
ごはんは今日の疲労回復と、明日の体力を生み出してくれるエネルギーだ。
半分ほど食べたところで、やっと話す余裕が出てきた。
「あの本読んだか?」
「異能解放戦線?まだ途中。疲れて眠くなっちゃうんだよね……」
「読む必要ねーだろ、過激派組織のヤツが書いた本なんざ。つうか、話しかけてくんじゃねえ」
「轟くんは?」
「いや、俺も同じだ。途中で寝ちまう」
そっか…みんなはまだ読んでなかったんだ……。
「ハルはど────」
「……zzz」
「うわあ!!!?」
「っぶね!!!」
寝落ちしかけて顔面からカツカレーに飛び込もうとしていたところ、隣に座っていた爆豪が間一髪で俺の首根っこを掴んでくれたことで大惨事を免れることが出来た。
さすがに俺の意識もハッと浮上する。
「ね…寝てた……」
「ハル危ないよ!!」
「食べる時は集中しろ」
「テメェ赤ちゃんか!!!」
ごめんごめん、と謝りながらカツカレーを口に運ぶ。
「ハルは読んだか?」
「一応なー。でも…わかるようでよくわかんなかったかなー…」
「なら読んだ意味ねーだろ」
爆豪の鋭いつっこみに思わず俺は確かに…と呟いた。
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