◎ 誕生日会(1/3)
「葵さーん!ツナさーん!おはようございます!」
笑顔で明るく声をかけてくるのは緑ヶ丘中に通うハルの姿。
葵達とは学校こそ違えど登校の際、よく会うことが多く、途中まで一緒に向かうこともしばしば。
朝から元気なハルにつられて葵もニッと笑う。
「ハル。おはよう」
するとそんな葵の笑顔にやられたのかハルは頬を赤く染めながら飛びつく。
「おっと…」
「はひ〜今日も葵さん素敵です」
「おい、ハル!あんまり葵に迷惑かけるなよ!」
「ツナさん!ハルは別に迷惑かけてるつもりはないです!これは葵さんに対するれっきとした愛です!」
「意味わかんねーし!」
今日もいつものように途中まで一緒に登校してまたねと別れていく。
日常の中の何気ない出来事ではあったが、葵のことを好いているハルにとっては幸せな時間だったのだ。
「(今日も葵さんに会えてハルはハッピーです〜)」
葵達と別れた後もハルは嬉しそうに笑いながら赤くなった頬に手を当てた。
そして、また明日も一緒に登校出来ければ良いなと思いながら、軽い足取りで学校へと向かった。
◇
「はひ!お誕生日会ですか?」
沢田家でいつものようにランボやイーピンの面倒を見てくれていたハルに葵は山本の誕生日が近いから一緒に誕生日会をやろうと持ちかけていた。
「ツナと話しててさ。ハルも良かったら参加してくれないかな?」
「もちろんです!」
「よかった。ありがとう」
ニッと笑う葵にハルは照れたもののぐっと堪えて下唇を噛み締めた。
「ツナ!ハルも誕生日会来てくれるって」
「そ、そうなんだー。あはは!」
「?なんかツナさん変じゃないですか?」
「!そんなことないよ!」
じとーと見つめるハルに焦りを隠せないツナ。
結果的にはハルが折れて、まあ良いですけどと言いつつツナから視線を逸らした。
「でも誕生日会っていったら何がいるんだ…?ケーキは用意するとして……」
「お部屋を飾りつけたりするのはどうですか?最近は百均でもキュートなのいっぱいありますよ!」
「お、それ良いな。……そうだ!今から買いに行かない?」
「賛成ですー!」
「せっかく時間もあるし良いね……げっ」
早速出かける準備をしようとした時、ランボが興味津々にこちらを見ているのにツナは気づき思わず声を漏らす。
ランボはにやにやしながら言った。
「あらら〜お出かけならオレっちも行くもんね!」
「(ランボが来ると買い物に集中出来ないんだよなー…)」
ツナの頭には出かける度に騒いだり、迷子になったりと迷惑をかけているランボの姿が。
そんな経緯もあり出来ればランボは連れて行きたくはない、そう考えたツナはランボを抱えると言った。
「こら!お前はオレと留守番するぞ!」
「えー!ツナとじゃヤダもんねー!葵かハルが良いー!」
「んー…でもハルは飾りとか見て欲しいし……ツナ。やっぱりオレが残ろうか?」
「!いや、その、それは――…」
言葉を濁すツナに葵はハッと何かを思い出したかと思うと苦笑いを浮かべた。
そんな様子にハルは首を傾げたが、特に言及はしなかった。
そんな様子にツナはほっと安堵の息を漏らした。
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