明日晴れるかな(日常編) | ナノ

 君の居場所(1/4)



「うんうん……え?ほんと!?」

「葵兄、誰と話してるんだろう」

「随分嬉しそうね」



電話している葵をリビングから見守る沢田家の居候組たち。
いつもよりどこか嬉しそうに話す姿に興味津々みたいだ。



「もしかしたらあいつが来るかもな」

「あいつって――誰のことだよ?リボーン」

「すぐわかるぞ」



ニッと得意げに笑うリボーンにはあ?とツナは首を傾げた。
すると電話を終えた葵はどこか軽い足取りでリビングへと戻ってきて、ニコニコと笑いながらみんなの元に座った。

そんな様子にランボは指をさしながら言う。



「あらら〜なんか葵、ご機嫌だもんね。さては、何か隠してるな!?」

「*○△#!」

「そんなことないよ」

「どうしたの?やけにご機嫌だけど――何か良いことでもあったかしら?」

「実はね……明日オレの兄さんが日本に来るんだ」



葵には3歳上の兄がいて、今はアッビサーレファミリーのボス候補としてイタリアにいるのだが、そんな彼が日本に遊びに来るとのことだった。



「千李が来るのね。ふーん……」

「(ビアンキ全然興味無いじゃん……!)」

「ビアンキにも久々に会えるの楽しみって言ってたよ」

「私は正直どうでも良いわ」



ズバッと言い切るビアンキに苦笑いを浮かべた。
するとそんなビアンキの隣に座ると座っていたフゥ太は尋ねた。



「ビアンキ姉は葵兄のお兄さんと知り合いなの?」

「まあ、彼の所属するアッビサーレファミリーもそこそこ大きいから――顔見知りってとこかしら」

「そういえば葵のお兄さんもマフィアなのか――」

「良かったなツナ。同じボス候補の先輩としていろいろ話を聞けるぞ」

「だからオレはボスにはならないって!」

「またそんなこと言ってんのか」

「ふごっ!!?」



リボーンはハンマーに返信したレオンでツナの頭を思いっきり殴りつける。
その勢いで隣に座るランボを下敷きにしてしまい、重いと大泣きし始めて、何故か頭から手榴弾を取り出し始める。



「痛いもんね〜!!うわあああ!!」

「ランボ!?なんで手榴弾なんか持ってるんだよ!!」

「うるせーぞ」

「ぐぴゃっ!?」



大声で泣きわめくランボにイラッときたのか、ツナと同じようにリボーンはハンマーで殴りつけていく。
するとツナと違い身体の小さいランボはそのまま窓の外へと飛ばされていった。



「ランボ!?」

「おい!またランボ殴って――」

「うるせーから仕方ねーぞ」

「(こんな光景お兄さんに見られたら絶対ひかれるーーっ!)」



ツナのイメージ的に、葵の兄なら温厚だけど、長男ということもありどこかしっかりと生真面目な性格だと考えていた。
もしそんな人にこんな様子を見られたら…と考えると頭が重くなりガーンと俯く。

するとそんなツナを見てビアンキは口を開く。



「大丈夫よ。千李は葵と違って馬鹿だから気にしないわ」

「んな!?」

「僕の順応ランキングと能天気ランキングでもかなり上位にいるね」

「確かにあいつは楽観的でなんも考えてねーからな」

「(みんな葵がいるのに酷い言いようだ……)」



ガーンとなっているツナとは対照的に、葵はみんなの会話を聞いていてクスッと小さく笑っていた。







翌日、葵は千李を迎えに行ってくると出かけており、ツナはそわそわとしながらその帰りを待っていた。

リボーンやビアンキはイタリアにいた時にあったことがあるのかあんな風に蔑ろにしていたが、初めて会うツナにとって、葵の兄とはなんとなく緊張する存在でどんな人なんだろうといろいろと考えては消えていく。



「葵君のお兄さんどんな人かしらね〜」

「ママンは昨日電話で話したの?」

「ええ。明日はお世話になりますって、礼儀正しい感じだったわよ」

「(みんなの話を聞けば聞くほど、どんな人なのか分からなくなってきた……)」



すると家の前で車の止まる音が聞こえたかと思うと誰かが話す声が聞こえる。
葵が帰ってきたと察したのと同時に玄関のドアが開かれた。



「ただいま」

「お邪魔します」



葵の声に続き、聞きなれない男性の低い声。
玄関へと向かうみんなの後をツナも慌てて着いていくと葵と背の高い男性が立っていた。
だが、男性の方は下を向いていて顔が見えない。



「あらら〜お前誰だ?」

「♯○×$?」

「どうも、始めまして」



男性が顔を上げながら言葉を発する。



「葵がいつもお世話になってます」



何故かひょっとこのお面を付けていて、全く状況のつかめないツナたちはぽかんと呆気にとられていた。







「んー…ウケなかったな……」

「ダダ滑りだったぞ」

「だから止めようって言ったのに――」



あれから一通り自己紹介を済ませて、奈々の入れたお茶とお菓子を食べながら会話に花を咲かせていた。
千李は玄関に入った時に着けていたお面を見ながらもんもんとした表情を浮かべた。



「相変わらずね、山下千李」

「ビアンキも変わらないな。ま、元気そうで何よりだ。……にしても結構人いるんだな」



葵を含めて沢田家に6人も居候をしていて、今いるリビングも人でいっぱいになっていた。
特にランボやイーピンなど、小さい子も多いため賑やかだった。



「んで――」

「!」

「君がツナだな。葵から話は聞いてるぞ〜ボンゴレ10代目!」

「お、オレはマフィアにはなりません!」

「あはは。葵の話通りだ」



そう言いながら笑う千李の顔はどこか葵と似ていて、2人は血の繋がった兄弟なのだと改めて感じていた。

初めて会ったのにそんな気がしなくて、そんな不思議な感覚にツナは襲われていた。



「葵〜ランボさん暇だもんね。遊ぼ〜」

「$○#×!!」

「あ、僕も!」

「そうだね。今日は何して遊ぼうか?」

「オレ良いもん持ってきてるぜ」



千李はそういうと持ってきたカバンの中身をごそごそと探る。
何が出てくるのかと目をキラキラさせながらランボたちは見つめている中、千李が取り出したのは――



「じゃーん。竹とんぼ〜」

「「「…………」」」

「あれ?」

「どうして竹とんぼ持ってるの?」



葵が困ったように笑いながら聞くと、千李も3人が全く興味を持っていないことを察したのか少しだけ考える。



「最近日本でこれが流行ってるってファミリーから教えてもらったんだけど……オレ、またやらかした?」

「んー…(アッビサーレのみんな楽しんでるんだろうなー…)」

「(完璧に騙されてるーーっ!)」

「えー、こんなのじゃなくてランボさんもっと面白いのがいいー」

「まあまあ、これ意外とコツ掴めば高く飛ぶんだぞ」



そう言いながら千李は庭に出ていくと、竹とんぼを飛ばす。
するとみんなの予想を超えて竹とんぼは空高く飛んでいき、先程まで興味のなさげだったランボ、イーピン、フゥ太はすごいと目をキラキラさせた。



「これで誰が1番高く飛ばせるか競走するぞ!」

「僕もやりたい!千李兄教えて」

「&☆#\○!」

「フゥ太ずるい!ランボさんにも教えるもんね!!」



わいわいと遊び始めた光景をツナはぽかんとした。

どちらかというと人見知りをするイーピンやなかなか手のかかるランボをものの一瞬で自分のペースへと持っていき、一緒に遊んでいる千李を見ながらため息混じりにビアンキが呟く。



「やっぱあいつ昔から変わんねーな」

「あれじゃどっちが子供か分からないわね」

「ほんとだね。でも、みんな楽しそうでよかった」

「おーい。お前らもやろうぜ」



無邪気に笑いながら誘うもののリボーンとビアンキは嫌だと一刀両断していく。
どこかしょんぼりする千李を見かねて葵はやれやれと立ち上がるとツナの方を向く。



「ツナはどうする?リボーンやビアンキと一緒に見とく?」

「せっかくだし行こうかな」

「ありがとうね」



葵はそういうとニッと笑った。

それから2人も合流したのだが、思いのほか楽しんでしまい童心に戻って遊んでいた。
その様子を呆れながらもリボーンとビアンキは見守っていた。





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