◎ 標的12 バレンタインデー(1/3)
「(なんだか、ツナの様子がおかしいような……?)」
いつものように2人で登校しているが、ツナの様子がどこかそわそわとした。
そんなツナを見て、何かあったかと考えていると獄寺と山本が声をかけてくる。
そしていつものように山本は葵の肩に腕をかけた。
「山本、重いってー…」
「悪い悪い!葵ってちょうど良い高さなんだよなー」
「なーにやってんだか……。10代目!今日も寒いですね」
「そ、そうだね」
「そういえば葵って寒いの苦手だったんじゃなかったか?」
「マフラー巻いて、カイロも貼ってきたから全然大丈夫!」
ニッと笑いながら、手には持つ使い捨てカイロを3人に見せびらかした。
そしてふいにツナと目が合ったかと思うと、顔を赤くして慌てて目をそらす。
「ははっ。でも鼻真っ赤だぞ」
「なぬ!?」
葵はそう言うと巻いていたマフラーに顔を埋める。
「顔だけはカバーできない…寒い……」
「顔面覆えばいいだろ。オレが泥棒がかぶってるような覆面でも買ってやろうか?」
「……別に良いもん」
いつも通り雑談しながら4人で学校へと向かうが、近づくにつれて何やら騒がしく校門では大量の女子生徒が待ち構えていた。
「なんだか騒がしいような…?」
「なんかあんのか?」
「さーなー?」
「(みんな忘れてるの!?)」
首を傾げる3人とは対照的にツナは心の中でツッコミを入れる。
そのまま校門に向かおうとした時だった、その中の女子生徒が4人を指さしながら声をあげる。
「あ、3人来たよ!!!」
理解する間もなく女子生徒達が葵達目掛けて走って行き、見事にツナだけ避けて3人を飲み込んだ。
すると女子生徒達は持っているかわいくラッピングされたチョコレートをそれぞれお目当ての人物へと押し付けていく。
「葵くーん!チョコ受け取って!」
「ちょっと私が先よー!」
「私も頑張って作ったから受け取って!」
「(チョコ……?)」
かわいくラッピングされたチョコを見て葵はハッとする。
今日は2/14のバレンタインデーで、そういえば朝のテレビでもバレンタイン特集をやっていたことを思い出す。
「(だからツナそわそわしてたのか……!)」
葵は一人一人に笑顔でお礼を言いつつチョコを受け取る。
そしてうまくスキをついて、女子生徒たちの群れから離れていきツナと合流した。
「ツナー……っ」
「葵!見つかる前に先に入っちゃおう」
「う、うん……(山本、獄寺ごめん……!)」
両手には溢れんばかりのチョコを抱えながらツナと一緒に下駄箱へと向かう。
「でもこんなにたくさんのチョコどうしよう……あ、みんなで食べれば良いか!」
「多分ここにも……」
葵の下駄箱をパカッと開けるとぎゅうぎゅうに詰まっていたチョコが音を立てて崩れ落ちていく。
さすがに1人では持ちきれなかったため、ツナにも持つのを手伝ってもらうことに。
落ちたチョコを拾っているとあるものを見つけてツナはガーンとなる。
「葵、なんか……こんなのも入ってるよ?」
「どれどれ――“葵チョコくれ!一生の頼みだ!!”……!?」
「“葵のことが好きだー!!てことでチョコくれー!!!”」
明らかに男の子の字でチョコの催促が書かれている手紙がチョコの中にいくつか紛れており、2人はガーンとなりながら立ち尽くした。
「(確かに葵はかわいいけど……ストレート過ぎるだろ!?)」
「ツナ……」
「ど、どうしたの?」
「……やっぱりオレって男らしくないのかな」
一応、9代目から男装するように命じられているのもあり、葵はしょんぼりとしながらツナに問いた。
ツナはうーんと少し考えるとこう言った。
「そ、そんなことないよ!現にかっこいいから女子からチョコを貰えてるわけだし……自信持ちなって!」
「!ツナ、ありがとうな」
そう言って葵はニッと笑う。
そんな葵の笑顔にツナは頬を赤らめた。
「そういえば、ツナはチョコもらいたい人とかいるのか?」
「え、ええ!!?」
突然の質問に動揺を隠せず、目を泳がせまくるツナ。
「(そ、そりゃ葵からもらえたら嬉しいけど――!)」
「んー……わかった!!」
「!?(もしかして、バレたー!?)」
「京子ちゃんだろ?」
得意げに答える葵にツナはこけっとすっ転びそうになる。
「(確かに京子ちゃんからもらえても嬉しいけど……!)ち、違うよ!」
「あれ?ハズレか――なら、ハル?」
「ハルじゃないよ…」
「なら――ビアンキとか?」
「ビアンキだとポイズンクッキングで殺されちゃうよ!!?」
「じょーだん、じょーだん」
そう言ってまた悪戯っぽく笑った。
「結局誰なの?クラスの女子?それとも他校の子とか――」
「想像に任せます!!」
「ええー」
かなり鈍い葵に少しだけ複雑な心境のツナだった。
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