◎ かくしごと(1/3)
音を立てて激しく雨が降る中、カバンを頭の上に乗せて走る葵と獄寺。
だがカバンが傘がわりになる訳もなく、びしょびしょに濡れてしまっていた。
「だーー!今日は晴れじゃなかったのかよ!!」
「〜〜〜っ!!(ワイシャツ透けたらヤバイよ!もし獄寺に見られたりしたら…!)」
葵は走りながらどこか雨を凌げる場所を探そうと提案する。
その時、ちょうど獄寺の住む大きなマンションがすぐ近くであることを思い出すが、自分の家に人を上がるのは…と苦い顔を浮かべる。
だがこの土砂降りの中、葵を1人追い返す訳にもいかない。
「おい。雨が止むまでうちで雨宿りするか」
「!いいのか?」
「お、お前が風邪ひくといろんなやつが心配するんだよ!それがめんどくせーし…」
「ありがとう!助かるよ」
獄寺の厚意にニッと笑いながら礼を告げると獄寺は恥ずかしそうに顔を赤らめながら逸らす。
そんな様子に葵は疑問符をうかべた。
よくある一般的なマンションなのだが、お世話になってるツナの家が一軒家なのもあり、エントランスを物珍しそうに葵はきょろきょろと見渡す。
何やってんだ…と鍵を開ける横目で葵を見つめた。
「あ」
「ん?」
「(そういえば…オレ部屋片付けてたっけ…)」
獄寺の脳裏には昨晩、オカルト雑誌を片っ端から読み漁り床に広げたままの自室。
帰ってきてから片付ければ良いやと後回しにした自分に少しだけ殺意が芽生えた。
扉の鍵を開けるや否や、くるりと葵の方を向き直るとタオル持ってるくるから玄関で待ってろと言い先に部屋に入っていった。
「(10代目がいなくて良かったぜ…)」
とりあえず2人分のタオルを持ち玄関に戻ると1つを葵に手渡す。
「ありがとう!」
「ついでに制服も乾かしてやるから着替えてこいよ。そのままじゃ帰れねーだろ」
「え、でも申し訳な――「ずぶ濡れのままいられる方が迷惑だっつーの」
葵は獄寺の言葉を聞いてそれもそうかと納得すると獄寺に案内されるまま浴室へと向かう。
「シャワー浴びたかったら勝手に使え。乾かしてる間はっと……!これ着とけ。あと制服はシワになるといけねーからとりあえずハンガーにかけとけよ」
「…………」
「な、なんだよ」
「ふふっ。いや、なんだか獄寺テキパキ動くからすごいなーって」
「バカにしてんのか!?」
「いはいっ!」
つい恥ずかしくなってしまい、照れ隠しに思いっきり葵のほっぺを掴むと引っ張った。
するとそのせいで上手く話せなくなったのが、そんな自分が逆に面白くなってしまって葵はツボに入っていた。
そんな葵を見て獄寺はなんとも形容し難い気持ちが湧き上がって来たかと思うと、ついその笑顔に釣られて笑っていた。
「って、何自分でウケてるんだよ」
「だって…なんだかマヌケで……!あははっ」
「マヌケなのはいつも変わらねーだろ…」
「あー!言ったなー!」
「!?」
葵は悪い顔をしたかと思うと先程の獄寺のように今度は葵が獄寺のほっぺを掴み横に伸ばした。
「おひ!はらへ――…!?」
「ぷ、あはは!これで獄寺もマヌケだ!」
「うるへー!!」
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