明日晴れるかな(日常編) | ナノ

 問題児(1/3)



「あ、風紀委員だ」

「相変わらずおっかねー…」



生徒たちが見回りをしている風紀委員メンバーを見かけるや否や、小声でヒソヒソと話しつつ道を開けていく。
リーゼントヘアで学ランを身に纏った、ガタイのいい男子生徒が歩く様子はなんとも異様な光景だが、並中では受け入れがたい当たり前の光景となっていた。

だがそこに1人、並中指定のブレザーを身に纏い、お世辞にもガタイの良いとは言い難い葵の姿があった。



「(何度やってもこの感じ慣れないな…)」



大名行列の如く、生徒たちが自分たちの邪魔にならないよう廊下の端による光景に葵は苦笑いを浮かべる。

すると窓の外から何やら言い争うような声を聞きつけ、葵はそれが聞こえてくる方角の窓を覗き込んでみるとそこには1人の男子生徒が柄の悪い生徒に囲まれている様子が見えた。
その様子に眉を潜めていると、他のメンバーもどうした?と同じように窓の外を眺める。



「今月の支払いまだだよねー?まさか持って来てないとか言わねーよな?ああ?」

「ひっ…」



今にも殴りかかりそうな勢いに葵はなんとかせねばと現場に向かおうとするがその行く末を一緒にいた風紀委員メンバーは慌てて止めに入る。
いつもなら雲雀がいないにしろ、何か問題が起これば急行するはずなのに、逆に止めに入られたことに驚きつつも葵はメンバーを説得するが首を横に振った。



「あいつらは委員長がいないこの状況では分が悪いです」

「よりによって五十嵐たちとは…」

「五十嵐…?」



メンバー曰く、以前から手を焼いており、中でも五十嵐という男子生徒が暴力団と繋がっているとの噂もあるため、先生たちもお手上げの状態。
また、喧嘩の実力も相当らしく、雲雀がいない状況では風紀委員のメンバーでも一筋縄ではいかないらしく、五十嵐が問題を起こしたときには即雲雀に連絡し、指示を仰ぐようになっていた。

一通りの経緯を葵は聞くが、この状況を黙って見過ごすとはできないとメンバーに訴える。



「すぐに委員長に連絡するので…とりあえず葵さん、落ち着きましょう!」

「ですがこのままじゃ…!」

「まあまあ!」

「(もしも葵さんに怪我でもさせてみろ…)」

「(そんなこと委員長に知られたらーー)」

「「(間違いなく咬み殺される!!)」」



風紀委員は口には出さなかったが、なんとしてでも葵を足止めするぞという考えが一致していることを察し、力強く頷き合った。

一方の葵はそんなことも知らずに、どうすれば男子生徒を助け出せるか考えていた。
階段への道は塞がれていて、生徒はもちろん先生も手が出せないとのことで他に助けが来るのは絶望的。
頼みの綱の雲雀も町内の見回りに出ており、早くても戻ってくるのに10分はかかると考えた時、やはり自分がなんとかしなければという結論に至る。



「!」



その時、手にかけていた窓に気づくと、下までの高さを測る。



「(この高さならいけるか…?)」



風紀委員に向き直るとニッと笑いながら言った。



「ヒバリさんへの連絡お願いしますね。それまではオレがなんとかするので」

「え」

「おい!まっーー」



風紀委員の制止より早く、葵は窓に足をかけたかと思うと躊躇いなく飛び降りていった。
その様子に周りの生徒も騒然としていたが、一番驚きを隠せなかったのは当事者たちで、五十嵐たちは一瞬時が止まったかのようにピタリと動きを止め、見開いた目で葵を見つめる。



「え、あ、ええ!!!?」

「大丈夫?」



そんな五十嵐達と集られていた生徒の間に入ると、優しく笑いつつ手を差し出す。
そして、ここは良いからと葵は男子生徒を逃すと、やっと五十嵐が口を開いた。



「誰かと思ったら、風紀委員さんじゃねーの」





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