◎ ツナトレーニング(1/4)
早朝、子鳥のさえずりが響く並盛町。
気持ち良さそうに伸びをする葵と眠そうに大きな欠伸をするツナの姿があった。
「じゃあ――今日も行こっか」
「う、うん」
2人は軽く準備運動を終えるとジョギングを始めた。
ツナの家に暗殺者が侵入してきて以来、2人は2日に1回早朝のジョギングをしているのだ。
葵はちょこちょことしていたのもあってわりと余裕そうな感じだが、一方のツナは運動が苦手と言うこともありいつも走り終えるとヘロヘロになっていて最初の方は疲れしまい、疲労が残り授業中寝てしまう始末。
「ふー終了!」
「はあ、はあ……」
「ツナ、おつかれ」
「おつかれ、葵。……ん?」
走り終えて息を整えるとツナは疑問符を浮かべており、それに気づいた葵はどうした?と声をかける。
「なんか、いつもより疲れてない気がする」
「きっと体力ついてきたんだよ。やったな!」
「うん!」
まるで自分の事のように喜んでいる葵を見てツナも思わず笑みが零れた。
継続は力なりとは聞くものの実際、昔から続けてこれたものなんて全然なくて。
今回も1人だったら3日坊主どころか1日でしんどいと諦めてたと苦笑いを浮かべた。
「(だけど、今回は葵がいてくれたから――)」
「なら、次からはもうちょっと距離伸ばしてみる?」
「え゛、それはちょっと考えさせて…」
「あはは。りょーかいっ」
◇
いつものようにジョギングをしているある日のこと。
後ろからヤケに視線を感じるとツナが振り向いたら、そこには目には熱い炎を宿しながら走る了平の姿があった。
「うおおおお!!!」
「お、お兄さん!?」
「おお!沢田と葵ではないか!お前らも早朝トレーニングとはやるではないか!」
「おはようございます。笹川さんもですか?」
「うむ。久々に町内にコースを変えてみたのだがいいものだな!」
話によればいつもは住宅街から少し離れている山の麓にある神社の方まで走っているらしく、かなり距離あるぞとツナはガーンとなった。
同じトレーニング仲間がいて嬉しそうに笑っていたが、はっと何かに気づいたような素振りを浮かべると満面の笑顔で言った。
「もしや――ボクシング部に入部するための基礎体力作りか!?」
「んなっ!?なんでそうなるんですか!」
「オレの熱い想いがついに2人に届いたのかー!」
「さ、笹川さん!オレ達はボクシング部に入るわけではなくて――」
「ん?違うのか?」
「朝ジョギングしていたらみんながみんなボクシング部に入部するなんて思わないでください!」
了平の誤解を解くことに成功すると、少しだけ寂しそうに了平はしょんぼりとしていた。
が、すぐにいつもの調子に戻ると大きな声で言った。
「せっかくだ!一緒に走ろうではないか!」
「いや、無理ですよ…オレ、走りきるだけで精一杯ですし……」
「ええい!つべこべ言わずに行くぞー!!」
「わっ!」
「んなー!?」
そう言うと了平は2人の腕をがっちり掴む。
そしてそのままものすごい勢いで走り出してしまい、結局2人はそんな了平に引きずられるような形で今日の分の距離を走り終えた。
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