◎ 武器チューナー(2/3)
あれから何事もなく家に到着するが、リボーンとジャンニーニは帰る途中にも話題に出ていた暗殺についてまだ話していた。
なるべくマフィア関連のことに巻き込まれたくないツナは葵を連れて自室へそそくさと逃げていった。
「ったく…オレはマフィアのボスになんてならないって言ってるのに」
「でも他人事には出来ないかも……(ツナだけじゃなくてオレのせいでもあるけど――)」
「葵までー!いくら葵の頼みだとしてもならないからね!」
「大丈夫だよ。ツナの気持ちもちゃんとわかってるから」
そう言いながら困ったように葵は笑った。
なら良いけどと安心したものの、どこかいつもと違う葵の様子にツナは少し違和感を感じていた。
「そういえば京子ちゃん来る前に課題の作文出しとかないと!」
「そうだった!とりあえずオレの部屋で――ノオオオ!!?」
「どうした!?」
部屋の扉を開けるや否や大声をあげるツナ。
そんなツナを心配して葵も部屋を確認するが、見渡す限り武器、武器、武器。
しかも日本ではなかなか見れない銃ばかりで、ここまで来るとどこから持ってきたのかとか、どうやって日本に持ち込んだのかとか突っ込むことも出来ず立ち尽くしているとタイミング良くリボーンとジャンニーニが2階に上がってきてリボーンは自慢げに話した。
「ちなみにこれはオレのアタッシュケースに入っていた武器だぞ」
「お前のそのアタッシュケースは四次○ポケットか!!?」
やっと出てきたツナの突っ込みを完全スルーし、ジャンニーニ家はボンゴレ専属武器チューナーでジャンニーニの父のジャンニーイチは凄腕の名チューナーだったとリボーンは言った。
「お前にも期待してるからな、ジャンニーニ」
「お任せください。もっとも父親には及びませんがね」
「そんな話興味ないから!つーかオレの部屋でやるなよ!!」
「場所がねーんだ。そういえば葵の部屋にジャンニーニが持ってきた武器が置いてある。葵はその中から好きなのを一つ選んでくれ」
葵の方の部屋を覗いてみるとツナの部屋同様部屋一面に武器が並べていた。
強いて違いを言うなら銃だけではなくナイフやバズーカなど多種多様な武器が並んでいる点だろう。
思わず目を丸くしながら葵はすごい数と呟いた。
「ちなみに全部ジャンニーニが改造済みの武器ばかりらしいぞ。恐らく殺傷能力はピカイチだな」
「オレは人殺しは――」
「……お前はそういうやつだったな」
どれだけ酷いことをされても、
どれだけ裏切られようとも、
自分が負った怪我の痛みを知っているからこそ、他人にそんな想いをさせまいとする。
それがお前のいい所でもあるが――
「…………」
「リボーン?」
「いや、悪ぃ。使う使わないは任せるがお守り代わりに持ってて損はねーと思うがな」
「そうだね……どうしよう」
葵はしゃがんで近くにあったピストルを手に持つ。
大きさに反してずっしりと重量感があり、金属で出来た本体はひんやりと冷たい。
見た目でなく、持ってみて改めて平和な日本には似合わない非日常な物だと思い知ると、そっとピストルを起き、困ったように笑いながらリボーンに言った。
「9代目には申し訳ないけど……オレ、やっぱり武器持つのは止めておくよ」
「武器があるとないとでは勝率も大きく変わるぞ」
「うん。だけど、オレが扱うにはまだ未熟過ぎる。未熟なオレが使えば、護る道具ではなくてただの人を傷つける道具になっちゃう気がするから……」
「…こりゃ、武器を使った特別特訓もいつか視野に入れる必要があるかもな」
「あははっ。射撃はリボーン先生に指南してもらおうかな」
「オレは大歓迎だぞ」
得意げに笑うリボーンに釣られて、葵も笑うとありがとうと言った。
そして隣の部屋に置いてきたツナとジャンニーニの様子も気になったので戻ることに。
リボーンを肩に乗せ、部屋の扉を開けようとした時、扉がひとりでに開いたかと思うとタイミング良くツナが入ってきた。
「びっくりした…!」
「ノックぐらいしろよ」
「ご、ごめん。そうだ!葵、京子ちゃんが来てるんだ」
「!」
京子が来たのは良いがさすがに2人の部屋に置いてある武器を見せることは出来ないと葵も察する。
ツナはリボーンとジャンニーニに部屋は使っていいが台所には絶対に降りてくるなと言うと意外にもあっさりとリボーンは要求を飲んでくれた。
やけに素直な様子に気持ち悪さと違和感を感じつつ、一応念押しすると葵と一緒に京子の待つ台所へと向かった。
◇
「“僕は将来大きくなったら巨大ロボになります”だってー!ツナ君可愛い」
各々が小学生の頃に書いた作文を持ち寄ると順番にそれを発表していく。
最初はツナで、なんとも言えない独特なセンスを持つ作文に思わず2人からは笑みが漏れるが、当の本人は恥ずかしさのあまり顔を真っ赤に染めていた。
「(は、恥ずかしい……っ)」
「あははっ。ツナって面白いな!」
「(こんな事ならもっとマシな夢書くんだった…小学生のオレの馬鹿ーーっ!!)」
すると何故か3人のものでは無い別の誰かのすすり声が聞こえてくる。
顔を向けてみるとそこにいたのは――
「ぐす……っ。いい作文ッスねー!巨大ってのが……」
「あれ、獄寺?」
「何で感動してるの!!?」
何故か獄寺は先程のツナの作文に感動し、涙を流していたのだ。
「どうしてここに?」
「ジャンニーニに改造してもらったダイナマイトを10代目に見てもらおうと思ってな」
「獄寺もジャンニーニが来てること知ってたんだ」
「リボーンさんに教えてもらったからな」
「んなー!?それは止めてー!!」
ツナの静止も虚しく、獄寺は改造済みのダイナマイトを着火すると窓の外へと放った。
改造ということで爆発の威力が増したのではわくわくしていた獄寺の期待とは裏腹に、ダイナマイトが爆発するとそこから何故か複数の鳩が鳴き声を上げて飛び出していく。
鳩以外にも風船などが飛び出し、その光景は戦闘力アップしたというより、見た目の華やかさがアップしただけで、もはや武器と呼べる代物では無くなっていた。
その様子を見た葵と京子は嬉しそうに笑いながら口々に言った。
「わー!面白ーい!」
「あははっ。ダイナマイトをパーティーグッズに変えてツナを喜ばそうとしたんだな!」
「ざけんな!10代目を喜ばすのはともかく、誰がダイナマイトをパーティーグッズに改造すんだ!ジャンニーニのやつに文句言ってきてやる!!」
ものすごい剣幕で2階へ上がっていったかと思うと、そんな獄寺と入れ替わるように今度はリボーンが降りてきた。
手には銃が握られており明らかに嫌な予感がするツナを他所に、ちゃおっスと京子と挨拶を交わす。
「何で来てんだよ!」
「改造した死ぬ気弾が見たくなってな。葵も見とけ、多分スゲーぞ」
「え、リボーン!?(京子ちゃんが目の前にいるけど……!?)」
「ちょ、待って!!」
「死ね」
引き金が引かれ死ぬ気弾が打ち込まれるかと思いきや、飛び出すどころか銃口から全く勢いなく死ぬ気弾が出たかと思うと重力に逆らうことなくコロンと真っ逆さまに落ちていく。
なんとも言えない沈黙が辺りを包んでいく。
「威力減ってるーーっ!?」
「これは一体……?」
「……ジャンニーニのやつシメてくる」
「「!?」」
「……?」
獄寺同様、ものすごい剣幕でリボーンも2階へと戻っていく。
するとその直後2階からものすごい物音が響き渡り、1階にいても聞こえてくるほどだった。
なんだろう?と疑問符を浮かべる京子とは反対にツナと葵は上で2人がジャンニーニをシメていることを察してガーンとなっていた。
さすがにこのまま放っておくことも出来ず、京子には少し待ってもらい2人は2階へと上がり、部屋の扉を開くとツナが叫んだ。
「静かにしてよ!!」
「助けてください!10代目!葵さん!!」
すると扉が開くと同時にUFOのような機械に乗った怪我だらけのジャンニーニが助けを求めて2人に突っ込んでくる。
葵は持ち前の反射神経で避けることが出来たが、ツナは対応しきれずジャンニーニの下敷きになり悲鳴が響く。
だがまだ腹の虫が収まらない獄寺が逃がすまいと指の間接を鳴らしながらジャンニーニへ近づいていく。
「10代目、聞いてください!こいつ武器を全部使いものにならなくしやがって!!」
「なっ!なにやってるんですか!?ジャンニーニさん!!」
「でも、ジャンニーニは名チューナーのジャンニーイチの……?」
「ですから、言ったはずですよ。私の腕は父親には及ばないと。それに改造とは必ずしも改良ではないのです。改悪もまた改造」
「「(開き直ったーっ!!)」」
自信満々に告げるジャンニーニに武器を改造された獄寺とリボーンはイラッとした表情を浮かべたが、葵がなんとかその場を抑えて、とりあえず改造した武器を直すようにお願いし、一件落着となるはずだった。
だが――
「ねぇ ランボさんのはできた〜〜あれれ?」
「…………なに見てやがる、アホ牛」
「ガハハハ!アホ寺、眉間がシワシワ〜〜!」
眉間にシワを寄せる獄寺を指さしケラケラと笑いながら近づくとほじった鼻くそを躊躇なくズボンへとつけた。
その瞬間、獄寺の怒りは頂点に達し、思わず拳が先に出てしまった。
「獄寺!ランボ殴っちゃダメだぞ!」
「うわああああん!!」
泣き叫ぶランボを心配しながら葵は近づく。
するとゴソゴソとランボは頭を探ると10年バズーカを取り出した。
それを見たツナはぎょっとしつつジャンニーニに尋ねた。
「10年バズーカ!?ジャンニーニさん、まさかあれも……」
「もちろん改造しちゃいました」
ジャンニーニがそう言ったのを聞いた瞬間、ツナはどんどん青ざめていくのを感じていく。
だが何も知らないランボはいつものように10年バズーカを発砲すると余りにはもくもくと煙が立ち込めて、ランボやその近くにいた葵や獄寺の姿も見えなくなっていく。
徐々に煙が晴れていくが、何故いつものように何も変わりのないランボの姿があり、ツナは拍子抜けした時だった。
prev|
next