明日晴れるかな(日常編) | ナノ

 君の居場所(4/4)



あれからしばらく経つとリボーンが疲れたのか鼻ちょうちんを膨らませながら眠ってしまたため解散することに。
リボーンは山本がおぶっており、そんな彼に葵は声をかけた。



「山本、大丈夫?オレ変わろうか?」

「オレは大丈夫だぜ。気持ちだけ貰っとくのな」

「まあ、葵に任せるよりは野球バカに任せた方が安心だな」

「な、なんだよー…」



葵、獄寺、山本が会話に花を咲かせているところの少し後ろをツナと千李は歩いていた。

すると千李は急にツナの肩をトントンと叩いたかと思うと、少しトーンを落としてこの中で葵が男装しているのを知っているのはツナだけかと耳打ちをした。
ツナは少しだけ躊躇いつつも頷く。



「そっか(流石にツナ以外のやつにはまだ言えてない、か…)」

「……あの。千李さん」

「ん?」

「千李さんから見て、葵は無理してないですか?」

「!」

「…………」



葵から自身の過去の話を聞いて、それ以来ずっと不安だったんだ。
いつも明るく笑う葵にオレも含めて、みんな元気をもらってた。
葵が笑うと不思議と周りの人達も自然と笑顔になっていくんだ。

だけどオレには想像もつかないような重い過去を抱えていて、慣れない土地に1人来て――

それに……



「(葵がマフィアだなんて、まだ信じられない……)」

「……ツナはさ、ボンゴレのボスになりたくないんだろ?」

「へ!?」



痛いところを突かれて図星になるツナに千李は笑った。
そしてリボーンは今寝てて聞いてないから大丈夫と言った。



「ま、マフィアになれだなんて普通のやつは受け入れられないよな……」

「……(な、なんか千李さんもマフィアなのに気まずい――だけど、)」



この人なら葵と同様、マフィアになりたくないことを話しても大丈夫だって自然と思えたんだ。



「オレやリボーン、葵だって普通じゃない」

「!」

「オレらは生まれた時からマフィアの世界にいて、今のオレらじゃそこから抜け出すことが出来ない」



マフィアに対する誇りとかプライドがあるとかそんなものではなくて、マフィアという後ろ盾がなければきっと生きていけなかった。

だから、普通の一般人になる事が出来なかった。



「マフィアになりたくないって言ってるツナだから葵も安心してるのかもな」

「え?」



ツナが大規模マフィアであるボンゴレの時期ボスというにはあまりにも不釣り合いだということを千李も感じていた。

欲があるようにも見えないし、飛び抜けて戦闘力が高い訳でも、頭がずば抜けてキレる訳でもない。

だけど、どこか包容力があって何者も受け入れるその器は唯一無二の才能なのかもしれないくて――
そしてそれはマフィアのボスだけではなく、人の上に立つものとして、必要な物なんだと千李はツナから感じた。



「…葵はさ、マフィアが苦手なんだ」

「!」

「人を傷つけたり、傷つけられたりするのがあんまり好きじゃねーんだ。あいつがそうだったように――」

「それって――…」

「……ツナ。葵のこと、護ってやってくれ」

「!」



正直、オレはすぐに首を縦に触れなかった。

だってオレなんかに比べて、葵は――
頭も良くて、運動神経も良くて、強くて、優しくて、モテモテで……いつもオレは助けられてばかりだったから。

だけど――



「任せてください」



次に出た言葉は真っ直ぐなもので――



「……言うね〜。この若造がっ」

「ええ!?今はそういう流れじゃ――」

「おーい。ツナ、兄さーん!」



葵の声が聞こえてきてそちらを向くと目の前には交差点があって、赤になって渡り損ねないようにと葵が手を振って声をかけてくれていた。

信号はまだ青色。



「千李さん、走りましょう!」

「でもまだ青じゃ――」

「ここ急に赤になるんで点滅し始めてからだと遅いんです!しかも1回赤になるとなかなか変わらなくて――」

「!…なるほどな。なら――」



そう言って千李はツナの腕を掴んだ。



「行くぞ、ツナ!」

「なっ!?(ちょ、千李さん、足早っ――!)」



ツナの言う通り信号は急に点滅を始め、すぐに赤へと変わった。
だが、走り出したのが早かったおかげで、ツナと千李も無事に取り残されずに横断歩道を渡りきることが出来ていた。

余裕そうな千李とは対照的に肩で息をしているツナに大丈夫?と葵は手を差し伸べた。



「う、うん。ありがとう」

「コルァ!葵!テメーは引っ込んでろ!ここは右腕のオレが――」

「なあ!?」

「あ、ごめん…もう手貸しちゃった」

「何ぃ!?」

「あははっ。まーまー落ち着けって」



わちゃわちゃと話す4人を見て千李は思わず声を上げて笑った。
突然のことにきょとんとしながら4人は千李を見つめると、ニッと笑いながら一言。



「お前ら仲良しだな」

「「「「!」」」」



突然そんなふうに言われて4人は恥ずかしいような、なんとも言い難い不思議な気持ちに襲われた。
だが、次の瞬間葵は笑いながら言った。



「うん!みんなオレの大切な友達だ!」





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