◎ 新学期(4/4)
「ツナ!」
ツナは掴んでいるロンシャンの手を離させると慌てて葵に距離を取らせた。
そして今度はツナが葵の腕を掴む。
「早く帰ろ!」
「う、うん」
「バイバ〜イ。沢田ちゃん!山下ちゃん!」
「あ、バイバイ」
「…………」
先程とは打って変わっていつものようにヘラヘラと笑いながら手を振るロンシャン。
2人はそんなロンシャンから逃げるように家路へと急いで行った。
それから腕は掴まれたまま会話もなく歩いていたのだが、いつもと違うツナの様子を心配して葵は口を開く。
「ど、どーしたんだよ?」
「…………」
「オレ何かした――「あ〜〜もう〜〜!」
急に頭をわしゃわしゃとするツナに葵は驚きを隠せずにいると、ツナはくるりと振り返る。
「ちゃんと課題してたらあんなことにならなかったのに!オレの馬鹿!!」
「!」
「葵も気をつけてね!ロンシャンだから誤魔化せたけど、女の子だってことバレたらまずいでしょ!?」
違う。
そうだけど、違う。
そんなの全部建前で――
誰にでも無条件に笑いかける、そんな光景を見ると変な気持ちでいっぱいになって、すごくオレが嫌なやつなんだって思い知らされるんだ。
「(オレ――京子ちゃんが好きなはずなのにどうして……)」
「……ツナ」
葵はツナと目線が合うようにしゃがみこむといつものように笑った。
「心配かけてごめんね。あと、ありがとう」
「!!」
不思議なことにこの笑顔を向けられるといつも許してしまうんだ。
「オレもごめん。急に引っ張ったりして…」
「ううん!大丈夫!」
すると葵は自分の両手をじっと見つめながらグーパーと手を開いたり握ったりしながら呟く。
「?」
「……オレももっと男らしくならないと――まずは筋トレしてみるか……」
「そ、そう意味じゃなくて…」
「ん?」
「(葵も山本に負けず劣らずの天然だ…)」
ガーンとなるツナに気づいてないのか、葵は一緒にやる?と提案するが、遠慮しとくよと断る。
断られてどこかショックを受けている葵を見て、なんとも言えない気持ちに襲われたツナはたまになら…と折れると、嬉しそうに笑った。
その笑顔につられてツナも笑みをこぼす。
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