◎ 新学期(2/4)
声のする方を振り向くとロンシャンが胴上げをされてはしゃいでいる姿が目に入る。
変なやつ来たと察したツナは葵を連れて他人のフリをしつつ教室に向かおうとした、がそれは叶わず――
「あ、沢田ちゃーん!山下ちゃーん!」
「げっ!!」
「?」
名指しで呼ばれてしまっては無視することも出来ず振り返るとロンシャンは嬉しそうにニコニコと笑顔を浮かべたまま2人に近づいていく。
「はいは〜い沢田ちゃんに山下ちゃん!同じクラスになったのも何かの縁だね。お互いガンバローよ!」
「うん!よろしくな」
「え?お、オレ……?」
「そーだよボンゴレ10代目!あ、山下ちゃんこちらこそよろしくね〜」
この平和な日本の、しかもどこにでもあるような中学校には似つかわしくない言葉がロンシャンの口から発せられて2人はん?と一瞬固まる。
先程まで全く警戒していなかった葵も一般人が知るはずもない、ツナとボンゴレ10代目の繋がりが気になったのかロンシャンに尋ねた。
「内藤君は…どーしてツナがボンゴレだって…?」
「山下ちゃん!ロンシャンでオッケー!それに沢田ちゃんがボンゴレなのを知ってるのはオレ、マフィアトマゾファミリー8代目候補だからだよー!」
「えーーっ!?(マフィア来たーーっ!!?)」
「?(トマゾファミリー…?)」
どこか聞き覚えのあるファミリーの名前に葵は首を傾げた。
喉の途中まででかかっているのに…ともやもやしているとその間にもロンシャンは先程自分を胴上げしていた、同じくトマゾファミリーのルンガ、マングスタ、パンテーラを紹介していた。
そうしていると獄寺と山本が登校してきて、葵達を見かけると声をかけたが、ロンシャンにこれ以上巻き込まれたくなかったツナはタイミングが悪い……とガーンとなった。
「あはは。なんだ、2人して変な顔して」
「そうですよ、10代目!また一緒のクラスですね!よろしくお願いします!!」
「葵もまた今年もよろしくな!」
「こちらこそ」
「そういえば――おめーも一緒か」
「あ!獄寺。また席近かったらあの暗号みたいなの作れ――むぐっ!!?」
何か言おうとした葵の口を獄寺は顔を真っ赤にしながら慌てて塞ぐ。
そしてそれ以上何も言うなと黙らせ、首を傾げるツナ達にもなんでもないですよとはぐらかし、なんとか場を収めた。
獄寺は睨みをきかせつつ葵にその事は10代目や山本に言うなと耳打ちし、釘を指した。
「ん?そーいや、ツナ、葵。あちらさんは……?」
「はいはい、ファミリーの皆さんお揃いで!ご紹介に預かりませんが!トマゾファミリーの8代目ボス!内藤ロンシャンで〜〜〜〜す!!」
「お前!トマゾって!!」
「知ってるの、獄寺君?」
トマゾファミリーとは今は亡きボンゴレ2代目と殺し合いを行ったほど因縁があるファミリーで、ボス名前が代々ロンシャンなど変わった風習もあるらしく、半ばマフィアだと信じきっていなかったツナは関係者来たとショックを隠せない。
一方の獄寺はと言うと、そんなトマゾファミリーがボンゴレになんの用だと威嚇を始める始末で、そんな獄寺を葵はなだめていた。
わりとそこそこな修羅場が眼前に広がる中、山本は笑いながら言った。
「何かよくわかんねーけど、面白ぇクラスになりそーじゃん」
「(山本的まとめ出たーーっ!!)」
新しいクラス。
新しいクラスメイト。
どうやら今学期も一筋縄ではいかない様子。
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