◎ 標的16 お花見(2/5)
葵の言葉を聞きなれた声が遮る。
声の主を辿ると黒い学ランを羽織り、腕には風紀委員長と刺繍された腕章をつけた雲雀の姿があった。
色鮮やかな桜と学ランとの相性が良いのか、桜をバックに立つ雲雀は非常によく映えていて、思わず葵は呟いた。
「……これが和ってやつか――」
「へ!?」
「何呑気なこと言ってんだ!このアホ!」
「でも君は役に立たないね。後はいいよ、自分でやるから」
大声をあげる獄寺達には目もくれず、雲雀はトンファー構えながら冷たい目で倒れた風紀委員を見下ろす。
風紀委員が微かに委員長と慈悲を求めたが、無常にもトンファーは振り下ろされ鈍い音が響く。
そして、人の上に立つより屍の上に立つ方が落ち着くともらし、そんな雲雀にツナ達は背筋が凍った。
今まで風紀委員に向けていた視線を葵に向ける。
「それに今の僕は機嫌が悪い」
「……?」
「…なんでって顔してるね、葵」
「そりゃ…ヒバリさんの機嫌が悪い理由をオレは知らないか…「君が原因なのに?」
ますます訳がわからなくなった葵は頭に疑問符を浮かべる。
そんな様子にため息を吐きながら携帯を見るように雲雀は促す。
言われた通り携帯を開くと不在着信1件の通知が来ており、それは雲雀からのものだった。
あちゃーと苦笑いを浮かべつつ恐る恐る尋ねる。
「今日って風紀委員の集まりありましたっけ……?」
「まあね。でも君、全然出ないから」
「全然って1回しかかけてきてないんですが……!?」
「とにかく」
雲雀は葵に歩み寄ると腕をつかみ自身の方にひっぱりツナ達から距離を取るとまた口を開いた。
「葵以外はいらないから、君達消えてよ」
「消えてってなんですかーーー!?」
「ヒバリ!てめぇ、10代目になんつー口の利き方を!それに!」
「わっ!」
「こいつはオレらと花見するために一緒に来てんだよ。風紀委員だかなんだか知らねーけど離しやがれ!!」
獄寺は雲雀に掴まれていない方の腕をひっぱり、キッと睨んだ。
お互い譲らず自身の方にひっぱるせいで、葵は腕がもげると、顔を歪ませた。
その光景に見かねたツナと山本は2人を落ち着かせようとした時だった。
「いやー、絶景!絶景!花見ってのはいいねーー♪」
「!」
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