◎ 標的13 山本トレーニング(3/4)
それからツナたちは制服から私服に着替えて、並中へと向かった。
建立記念日なだけあって部活も休みらしく、いつも生徒で賑わっている学校も今日は誰もおらず静かだった。
校庭に着くや否やリボーンは山本に小さい野球ボールを手渡す。
「まずはピッチングだ。あの柱の印の所目掛けて投げてみろ」
「おうよ!」
多少小ぶりなものの見た目はただの野球ボールで、なんだかんだ言いつつ普通に野球の特訓をするのかと安堵していたのもつかの間、山本がいつものように鋭い眼光で目印に向かってボールを投げる。
一直線にボールが目印に飛んでいき、柱に当たった時だった。
ドガァン
「……え?」
柱にボールが当たった瞬間、コンクリートで出来た柱が大きな音を立てた崩れていった。
そんな様子にツナはあんぐりと口を開けガーンとなっており、その横にいた葵はきらきらと目を輝かせながらその様子を見ていた。
「リボーン……これすごいな!!」
「ええ!?」
「そうだろ。こいつがボンゴレ企画開発部に発注していた岩をも砕く“投の武器・マイクロハンマー”だ」
「岩も砕く……?」
まだボンゴレどころかマフィアのことをリボーンのごっこ遊びだと思っている山本は首を傾げる。
そんな山本を見て、ツナは慌ててリボーンへ詰寄る。
「う、嘘つくなよ!山本をお前らのそーゆーへんてこな世界に引きずり込むなって言ってんだろ!?」
「嘘じゃねーぞ、現に山本はあの柱を砕いたしな」
「(武器も確かにすごいけど……コンクリの柱を砕く山本の肩も相当だよな)」
山本は野球が大好きで、
いつも一所懸命練習していて、
その努力が野球だけではない、他のいろんな所で実ってるんだ。
リボーンはきっと、山本のそういう所に目をつけたんだろうな。
「おいツナ、よく見ろって。あの柱、発泡スチロールだって。あーやってオレに自信を持たせよーとしてくれてんのかもな」
「………それは違うと…」
「(ちょっとだけ……天然だけど)」
次と言わんばかりにリボーンは山本を連れてさっさと次の特訓へと向かった。
その時、ツナと葵で柱を確認するがめっさコンクリートだねと苦笑いを浮かべた。
そして2人の後を追おうとした時だった、聞きなれた声が響く。
「10代目ーーーっ!」
「あ、獄寺!」
「って、お前も居たのかよ…っ」
「そんなこと言うなってー」
困ったように笑う葵に獄寺は一瞬顔を赤らめたような気がしたが、再びツナに向き直る。
どことなくいつもより機嫌が良いような気がすると思っていると、いつもよりワントーン高めの声でニッコリと笑いながら言った。
「とうとう山本クビっスか?」
「クビ……?」
「(リボーンのやつ、話作ってるーーっ!?)」
どうやらリボーンからは詳しい話は聞かされておらず、断片的な情報から判断して今に至っている。
リボーンの無茶苦茶なトレーニングに付き合わされる被害者のひとりとして、ツナは獄寺に対して申し訳ないような気の毒なような気持ちで襲われた。
とにもかくにも山本がクビだという誤解を解くと、獄寺は悔しそうに舌打ちをした。
そんな様子を2人は苦笑いを浮かべて見ていた。
「実はね、獄寺君。リボーンが山本に武器を持たせようとして…」
「なっ!」
「だから、オレ達もここに居るんだ」
依然として悔しそうにしている獄寺に気がついたリボーンと山本がそれぞれ一言ずつ声をかける。
だが、山本のことがどうも気に食わない獄寺はキッと睨みを効かせた。
「?」
「(何で、こんなヤツのためにリボーンさんや10代目、それに…葵まで…!)」
「なあなあ。獄寺は山本の武器は何が良いと思う?」
「ヘッ!俺はなぁ――生えてる草を投げる攻撃とかいいと思うぜ」
「(もはや武器じゃねーーっ!!)」
「草を?……確かに毒物を含むものなら使えなくもないかも……現地調達も出来るし、メリットは確かにある。でも軽いからどうやって飛行距離を出すかが鍵になるな……」
「なっ!?」
「(葵はなんか真剣に考えてるし!!)」
そんな彼らは放っておいて、リボーンは懐から次の武器候補であるバットを取り出す。
そのバットは何処にでもあるようなよく野球で使われている普通の金属製のもので武器というには……と首を傾げる。
山本も持ってみると少しウェイトが入っているのか重いと言った。
そんな山本に対してリボーンがグリップを覗くように言い、その言葉通り覗いてみると先端がパカッと開きレンズが現れた。
「なんだ、望遠鏡かー」
「(そこ納得しちゃうところ!?)」
「(うっしゃっ!!)流石リボーンさん!山本にぴったりだ!」
「え、どんな風に見えるんだ?」
「ん?葵も覗いてみるか?結構遠くまで見えるぞ」
「!(野球バカ!それ以上葵に近づくな!)」
予想を反してごく普通のバットが出てきて拍子抜けしているツナはこれを使ってどう戦うのかリボーンに尋ねようとした時だった、望遠鏡を覗いていた山本と葵がピクリと反応し、近くにあったビルの一角に視線を向ける。
するとそれと同時に山本たちに向かって狙撃されたのだ。
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