明日晴れるかな(日常編) | ナノ

 標的10 映画館(3/4)



それから映画は無事に終わり、休憩も兼ねて近くのカフェでお茶をしながら先ほどの映画の感想に花を咲かせていた。

笑いながら話す山本とは裏腹に葵とツナは先ほどの映画がよほど怖かったのか、顔色はすぐれないままいた。
すると思い出したかのように山本がジュースを飲みながら呟く。



「そういえば、お化け屋敷とかホラー映画とか見た後は幽霊見かけるってよく聞くよなー」

「「!!?」」

「この野球バカッ!そんなもん迷信に決まってんだろーが」

「でもなんか心霊関係は幽霊が集まるっていうし…でもそうだな。迷信だよな、あはは」

「山本…それ以上言ったら怒るからね……」

「あはは。悪かったって葵」



そこから軽く雑談していると良い時間になってきたので解散することに。

帰る方面の違う山本と別れると、残った3人はツナの家へと足を進める。
本当は獄寺は山本と同じ方向だったが、どうしてもツナを送っていくと聞かなかったため一緒に向かうことになったのだ。



「……いやー、今日の映画大したことありませんでしたよね!」

「(その話には触れないでよ、獄寺君!)」

「(忘れようと思ったのに…!)」



すると目の前に中型犬くらいの大きさの犬が通りかかる。
首輪をしていなかったため、野良かなと見ていると次の瞬間大きなクラクションの音が鳴り響く。



「あっ!!」

「「?」」



犬が渡ろうとしていた横断歩道の信号は赤色。
そんな犬に向かって大型トラックが突っ込んできていたのに葵は気づくと駆け出した。



「危ない!!」

「!おい!!」



2人が止める暇もなく、葵は犬に向かって飛び込んでいく。
気づいた運転手はさすがにまずいと思ったのか慌ててブレーキを踏み、その音が辺りに響き渡る。
間一髪、犬を抱き抱えるとそのまま向こう岸の歩道まで滑り込み、なんとかトラックから犬を守った。



「何してんだあいつ…!!」

「バッキャロー!!赤だろ!気ぃつけやがれ!!」



運転手は怒鳴ると何事もなかったかのように走り去っていく。
そんな光景に獄寺は舌打ちしながらツナと共に葵の元へと向かう。



「無理しすぎだよ!大丈夫!?」

「ごめんごめん。でもほら、この通り無事だよ」



そう言いながら無傷の犬2人に見せてニッと笑う。



「そうじゃなくてお前のことだよ!!!」

「あ、オレか!」



恥ずかしそうに頬をポリポリとかきながら苦笑いを浮かべている葵の腕から犬はスルリと逃げると、少し葵に向かって吠えるとどこかに走っていってしまった。



「あいつ助けてもらったのに…薄情なやつめ」

「多分さっきお礼言ってくれたんだよ。それだけで満足満足!」

「ーーって、葵の酷い怪我だよ!?」

「え?」



ツナが指差し先にはズボンは破れ、そこから赤い血が流れている葵の足。
冬場で厚着をしていたため、大きな怪我にはならなかったものの、足以外にも腕や手に痛々しい血が流れるほどの怪我をおっており、ツナと獄寺は顔を歪ませた。
そんな2人とは裏腹に葵は大丈夫と笑いながら立ち上がろうとしたときだった、左足首に痛みが走る。



「どうしたの?」

「足、捻ったみたい…でも大丈夫!このくらいなら全然歩けるしーー」

「さっき痛そうにしてたじゃん!それにもし骨折してたらーー」

「大丈夫大丈夫!」



そんな葵を見かねた獄寺は大きなため息を吐くと、眉間にしわを寄せながらしゃがみ込み背中を葵に向けて一言乗れと言った。



「え…?」

「…か、勘違いすんなよ!オレは10代目を困らせたくなかっただけだ。早く乗れ」

「でも…獄寺に迷惑かけちゃう……」

「はっ。お前みたいなチビ助、1人おんぶしたところでなんも変わんねーよ」

「(葵とオレ、そんなに身長変わらないんだよな…)」



少し悩んだが、そう言ってくれるならと葵は獄寺の背中に自身を預けた。
やっと折れたかとまたため息を吐くとゆっくりと帰路へついた。





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