◎ 標的10 映画館(2/4)
実はコメディーでした〜というオチを微かに期待していたものの、ごりごりのホラーテイストで映画のタイトルが映し出された瞬間、葵の一縷の望みは断ち切られた。
「ややややや、山本」
「どうしたんだ?」
「ぽ、ポップコーン落としたら勿体ないし……持っててくれない、かな?」
「ぷっ……ああ、良いぜ」
引きつった顔が面白かったらしく山本は葵の顔を見ながらニッと笑う。
一方のツナはというと英語で書かれていたタイトルの意味がわからなかったらしく、獄寺に教えてもらっており、意味を知るや否や顔を真っ青にしてぽかんと口を開けたまま画面を凝視していた。
そして画面は一度暗転すると、プロローグが始まる。
するとなんの前触れもなく髪の長い血だらけの女の人が現れた。
「ひいいいいいい!!!?」
「♯☆$%ッッ!!?」
周りと同じように叫び声を上げるツナと、あまりの驚きで声すら出ない葵。
そんな2人の隣座っている山本と獄寺は余裕そうだったりと、みんなそれぞれ違うリアクションをしていた。
映画が始まってから約30分。
さすが話題のホラー映画ということもあり、物語が進むにつれて怖さの方もグレードアップしていく。
ツナも葵と同じように声にならない叫びになっており、葵に至っては目にうっすらと涙を浮かべる始末。
最初は余裕そうな獄寺も叫びはしなかったものの顔を青くしている中、山本はただ1人呑気に笑っていた。
「あはは。すげー演出だな、葵!」
「………そ、そうだね………(なんでそんな余裕なんだよ……っ!)」
顔を青くしながら葵は俯く。
すると自分も怖いはずのツナが葵のそんな様子を心配して声をかける。
「大丈夫、葵?」
「う、うん…へ、平気平気……」
「ならいいけど……ひぃっ!!?」
「?」
ツナの叫び声につられて画面に目をやると、血色の悪い顔に浮かぶ充血した赤い目でギロリと画面越しに睨んでくる血塗れの髪の長い女性がドアップに映し出されていた。
今までとは段違いの迫力に葵は飛び上がるととっさに隣にいたツナに身を寄せた。
ツナは恐怖心よりも、葵のいきなりの行動に顔を真っ赤にしながら口をぱくぱくさせていた。
そんなツナに気づいた葵は慌てて離れる。
「ご、ごめんツナ…」
「だ、大丈夫だよ(むしろオレとしてはラッキーだったんだけど……!!)」
「(ツナにまで迷惑かけちゃったな……よし。今度こそは絶対驚かないぞ!ホラーといえど所詮よく出来た作り物!大丈夫大丈夫……)」
覚悟を決め、再び画面に視線を戻す。
するとバッチリ先ほどの女性と目があう。
《……見ぃーつけた》
「ひっ!!!」
覚悟を決めた瞬間、顔を真っ青にしながら驚いていたのはいうまでもない。
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